2025年10月07日
株式会社商船三井(社長:橋本 剛、本社:東京都港区、以下「当社」)は、本日西豪州ピルバラ地域におけるクリーンアンモニアバンカリング事業開発に関し、NH3 Clean Energy Limited(読み:エヌエイチスリークリーンエナジーリミテッド、以下「NH3」)およびOceania Marine Energy(読み:オセアニアマリンエナジー、以下「Oceania」)と覚書を締結しました。今年6月にピルバラ港湾局が発表した豪州初のアンモニアバンカリング構想であるピルバラ・クリーン燃料・バンカリングハブ構想(註1)における協業をNH3およびOceaniaと推進していくための覚書となり、同地区でのアンモニアバンカリングに関しては、外航海運会社として世界初の参画となります。
西豪州ピルバラ地区は、世界最大の鉄鉱石積出港を有し、ケーブサイズバルカーの主要寄港地になっています。ピルバラ港湾局は、同地区での低炭素アンモニアバンカリングの実現に向けて、ブルーアンモニア供給を行うNH3およびバンカリング事業を行うOceaniaと共同開発契約を締結し、30年までにダンピア港・ポートヘッドランド港でのケープサイズバルカー向けバンカリング事業開始を目指しています。
本覚書は、当社およびNH3・Oceaniaの3社が今後ピルバラ地区の鉄鉱石輸送船のアンモニア燃料への移行とWAH2(読み:ダブリュエーエイチツー)プロジェクト(註2)の実現に向けて、西豪州の鉄鉱石サプライヤーへの共同提案やアンモニアバンカリングにおける安全性等の検討を進めていくことを目的としています。
当社は、中国船舶集団青島北海造船有限公司にて竣工(2026-2027年予定)となるアンモニア二元燃料ケープサイズバルカー3隻を、CMB.TECH NV(本社:ベルギー)と共同保有の上、当社が定期傭船を行うこととしています(註3)。また、同アンモニア二元燃料ケープサイズバルカーを、西豪州と東アジアを結ぶ鉄鉱石輸送の航路に投入する見通しで、同航路において安全なアンモニアバンカリングオペレーションの確立やアンモニア調達の検討を行っています。当社は、本協業を通じアンモニア二元燃料船を運航する立場からピルバラ地区においての安全性確保・アンモニア調達の検討を進めてまいります。
各社コメント
当社 常務執行役員 髙橋 和弘
「本日、NH3およびOceaniaと覚書を締結できたことを大変光栄に思います。ピルバラ地区は、2026年から営業運航を開始予定の当社アンモニア二元燃料ケープサイズバルカーにとって重要な拠点となります。本協業は、ピルバラ地域における安全かつ信頼性の高いアンモニアバンカリング事業の確立に向けた重要な一歩です。パートナーの皆様と緊密に連携し、安全なアンモニアバンカリング体制の構築と持続可能な海運の推進に貢献してまいります。」
NH3 会長 Charles Whitfield氏
「私たちは、クリーンアンモニアのバンカリング事業を現実に一歩近づけるこのたびの商船三井との合意を大変嬉しく思います。この新たな合意は、低炭素燃料への転換が勢いを増していることを裏付けるものであり、NH3、ピルバラ港湾局、Oceaniaの間で既に締結されている共同開発契約を基盤として、2030年までにピルバラ地区にアンモニアハブを設立することを目指しています。新たに台頭するクリーンエネルギー産業の確立に向けて、クック西豪州首相とそのチームが継続的にご支援くださっていることに心より感謝申し上げます。これにより、私たちの鉱業分野やエネルギー輸出のより持続可能な未来への道が開かれることでしょう。」
Oceania 代表取締役 Nick Bentley氏
「当社による商船三井およびNH3社との協業は、エネルギー分野と海運分野のパートナーシップが、オーストラリアの鉄鉱石輸出業者や海運業界に対して実際に温室効果ガスの排出削減効果をもたらしていくことを示しています。NH3社のクリーンアンモニア生産能力、ピルバラ港湾のインフラ、当社のバンカリングサービス、そして商船三井の先駆的な二元燃料船隊を組み合わせることで、私たちはお客様がIMOの脱炭素化目標を達成できるよう、統合されたエンドツーエンドの船舶燃料ソリューションを創出しています。」
NH3 Clean Energy Limited社について:
NH3 Clean Energy Limited(ASX: NH3)は、新エネルギープロジェクト開発およびエネルギー関連資源の探査・開発に注力するオーストラリア企業です。WAH2プロジェクトを通じて、再生可能エネルギーを利用し、低炭素水素(低炭素アンモニア)を海外市場へ大規模に供給する事業を展開しています。NH3は、西豪州のマッキントッシュにおけるニッケル・銅・PGEプロジェクトおよびホールズクリークにおける金・ベースメタルプロジェクトを100%所有しています。また、マッキントッシュにおけるグラファイトに関してはアーンイン契約を締結しています。
ウェブサイト:www.nh3ce.com
Oceania Marine Energy社について:
Oceania Marine Energyは、西豪州パースに本社を置くオーストラリアの民間企業です。同社は、ピルバラ地域において安全で信頼性の高いクリーンアンモニアバンカリングの開発に取り組んでいます。同社のバンカリング船「Oceania α」は、ダンピアの低炭素アンモニア供給と、オーストラリア・アジア航路で運航する外航船との間をつなぐ重要な役割を果たします。これにより、IMOのネットゼロフレームワークやピルバラ港のクリーン燃料戦略に沿った海運業界の脱炭素化を実現します。
ウェブサイト:https://oceania.energy/
(註1) ピルバラ港湾局が今年6月に発表した、ピルバラ地域で産出された低炭素アンモニアを船舶燃料として供給する構想でバンカリング候補地としては、ダンピア錨地またはポートヘッドランド錨地を想定しています。
(註2) 西豪州は、脱炭素に向けたアジアのエネルギー転換が進む中、低炭素エネルギーへの需要増加に対応する適地となっています。WAH2プロジェクトは、NH3の主力プロジェクトであり、日本や韓国をはじめとしたアジア太平洋地域の主要経済圏に西豪州から低炭素アンモニアを供給することを目指しています。また、西豪州から東アジアへ鉄鉱石を輸送するケープサイズバルカーに舶用バンカリングを提供する役割も担います。
(註3) 過去プレスリリースをご参照ください。
世界初 アンモニア燃料ケープサイズバルカーおよびケミカルタンカー計9隻を整備 | 商船三井
商船三井グループが設定した5つのサステナビリティ課題
商船三井グループでは、グループビジョンの実現を通じて社会と共に持続的な発展を目指すための重要課題として「サステナビリティ課題(マテリアリティ)」を特定しています。本件は、5つのサステナビリティ課題の中でも特に「Safety & Value –安全輸送・社会インフラ事業を通じた付加価値の提供-」、「Environment -海洋・地球環境の保全-」、「Innovation -海の技術を進化させるイノベーション-」にあたる取り組みです。