大気汚染防止

硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)は酸性雨や大気汚染の原因となります。大気汚染は経済成長に伴って深刻化しており、人々の日常生活や自然環境にも影響を与えます。そこで国際海運業界においては、​国際海事機関(IMO)により、排ガス中の大気汚染物質を抑制するための規制が設けられています。規制の詳細に関しては、環境規制ページをご参照ください。
当社では、規制適合油の手配をはじめとして、船舶へのNOx除去装置(SCR)やSOxスクラバー搭載等を通じてこれらの規制を遵守しています。また、SOx排出を99%削減可能なメタノール燃料を使用可能な二元燃料船や、SOxについては100%、NOxについては約85%の排出削減を実現できるLNG燃料船の保有・運航を進めています。

※当社の大気汚染防止に関するマイルストーンと進捗は、商船三井グループ 環境ビジョン2.2ページの「マイルストーンの進捗」をご覧ください。


NOx(窒素酸化物)排出対策

船舶ディーゼル機関からのNox排出量は、国際海事機関(IMO)の条約により段階的に規制され、2016年1月からは3次規制が開始されました。これに先駆けて当社は、2014年より当社の運航する鉄鉱石専用船の発電機3台それぞれにNOx除去装置(SCR)を搭載し、試験運用を開始しました。

NOx除去装置(SCR)

NOx除去装置(SCR)

搭載するSCRは、当社、(一般財団法人)日本海事協会、ヤンマー(株)および(株)名村造船所が開発を行い、(一般財団法人)日本海事協会からIMOの規制に適合していることを確認した鑑定書を取得しています。

NOxは、エンジン内で燃料が燃焼する際に、燃料油や空気中に含まれる窒素と空気中の酸素が高温下で結合して発生します。船舶から排出されるNOxを除去するSCR脱硝装置(選択式触媒還元)を、自社で保有・運航する大型鉄鉱石専用船の発電機3台に搭載し、舶用ディーゼル燃料油に対する脱硝性能が国際海事機関の2016年からのNOx3次規制に適合することを確認しました。

当社は、(一財)日本海事協会、ヤンマー(株)と共同で、2013年12月の本船竣工時より同装置の実船運用を行っています。舶用ディーゼル燃料油による検証、約3,100時間(SCR脱硝装置3台の総稼働時間)を終了しました。
また、重質燃料油による耐久性、性能の検証を約15,000時間行っています。


SOx(硫黄酸化物)排出対策

SOxスクラバー

船舶の排気ガス中に含まれる硫黄酸化物(SOx)の排出を抑制する装置。導入によって国際海事機関(IMO)が定める船舶燃料油の硫黄分濃度に関する規制に対応するもの。当社は2017年に当社船舶の一部にSOxスクラバーを搭載する方針を決定し、スクラバーメーカー、造船所等と協力し搭載を進めています。

世界初の低速ディーゼル機関でのメタノール燃焼に成功、メタノール燃料船を建造投入

メタノール燃焼に成功したMAN Diesel & Turboのテストエンジン(関係者へ公開されたときの様子)

当社は、主機関の開発メーカーであるMAN Diesel & Turbo(デンマーク)と協力し、世界で初めて低速ディーゼル機関でのメタノール燃焼に成功。2016年度初には、メタノールおよび重油の2元燃料に対応可能な低速ディーゼルエンジンを搭載した船舶を投入しました。メタノールは硫黄分を含まないため、硫黄酸化物削減を可能とするとともに、通常の重油を燃料とする機関と比べて、二酸化炭素および窒素酸化物の排出量も削減することができます。


PM対策

停泊中の陸上電力利用・大気汚染物質新処理システム

PM(粒子状物質)とは固体又は液体の粒子のことを指します。米国カリフォルニア州では、大気汚染防止に向けた先進的な取り組みが行われており、なかでも「着桟中の船舶のディーゼル補機から排出される有害物質の措置についての規則(At-Berth Regulation)」では、港着桟中に排出するPM(ディーゼル微小粒子、NOx等)の削減が求められています。
港着桟中におけるPM対策として、船舶が停泊中に必要とする電力を、陸上からの電力供給に転換することで、船舶の発電機の使用を減らし港湾周辺のNOx、SOx、煤塵などの排出量を大幅に抑えることができます。当社コンテナ船、当社グループの各曳船会社で陸上電力受電システムを導入しているほか、内航船においても一部の港湾で陸上電力を利用しています。
また、2022年には米国カリフォルニア州の船舶発電機排気処理事業会社Clean Air Engineering Maritime社と、港着桟中の自動車船から排出される大気汚染物質を低減できる新処理システムの開発へ資金提供を含め協力し、2025年から実用開始する契約を締結しました。
港湾周辺の環境負荷低減を目的として、当社はメーカーと協力の上、陸上電力受電システムや大気汚染物質新処理システムの導入をさらに進めていきます。


メタノール燃料船

メタノール燃料船拡大による大気汚染防止の取り組み 

メタノール船“Cypress Sun”

当社は、世界最大級のメタノール輸送船隊を運航しており、うちメタノールを燃料として活用できる2元燃料船については2016年から保有し、船隊を拡大してきました。2023年には2元燃料船であるメタノール輸送船“Cypress Sun”が竣工しています。
メタノール燃料は、従来の舶用燃料を燃焼した場合に比べ、燃焼時の硫黄酸化物(SOx)排出量を最大99%、粒子状物質(PM)排出量を最大95%、窒素酸化物(NOx)排出量を最大80%、二酸化炭素(CO2)排出量を最大15%削減することができます。世界で主要な130港程度で供給・補油が可能です。多様な排出源から回収したCO2と再生可能エネルギーを利用して製造された水素を合成し生産されたeメタノールや、バイオガス由来のバイオメタノールなど、非化石原料由来のメタノールを活用すれば、排出されるネットGHG排出量の更なる削減につなげて行くことも可能です。
当社は、世界最大級のメタノール専用保有船社として、これまでに培ってきた経験、ノウハウを生かし、幅広い顧客ニーズに応えることで、メタノール輸送サービスのさらなる拡充に取り組むとともに、環境負荷低減に資するあらゆる技術の導入に積極的に取り組んでいきます。