商船三井グループは、当社グループの企業理念・グループビジョン・行動規範等に基づき人権方針を策定いたしました。同方針で定める内容に沿ってすべての事業活動における人権を尊重するとともに、グローバルでの持続可能な社会の実現に貢献します。当方針は2022年3月31日の取締役会で承認され、その後も適宜見直し、改定しています。
また、お取引先の皆さまにも人権に配慮した事業活動をお願いすべく、取引先向けに人権方針の周知を図る活動に取り組む他、人権の観点も含んだ「取引先調達ガイドライン」を策定しております。なお、「取引先調達ガイドライン」の詳細については、責任ある調達のページをご覧ください。
人権尊重への取り組みを推進するため、人権に関する課題については経営会議の下部機構であるサステナビリティ委員会を中心に審議を行い、同委員会の委員長はチーフ・フィナンシャル・オフィサー(CFO) が、副委員長はチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSuO)が務めています。また、取締役会は人権に関する取り組みへの監督責任を負っています。具体的な取り組みについては、環境・サステナビリティ戦略部が主管部署として関係部門と連携して取り組みを実行・推進しています。
国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」「国際人権章典」、「労働における基本的原則および権利に関する国際労働機関宣言」(結社の自由および団体交渉権の承認、 強制労働の撤廃、児童労働の廃止、雇用および職業における差別の撤廃、安全で健康的な労 働環境等の労働にかかる基本的権利を規定)、OECD多国籍企業行動指針、船員の労働に関する基本的権利を定めた「2006年の海上の労働に関する条約」等をふまえて、人権デューデリジェンスの仕組みを構築し、人権課題の解決に努めます。
人権デューデリジェンスの実施においては、当社グループのバリューチェーン上の人権課題の実態把握及び改善に向けた取り組みをさらに強化すべく、書面調査や現場へのヒアリング等を進めていきます。
2022年度より、外部専門家の助言や国別人権リスクを含む国際的指標を参考に、当社グループ事業を行う上で考慮すべき人権リスクを洗い出し、関連する事業部門と机上分析を実施しました。机上分析では、影響を受ける可能性のあるステークホルダーが置かれているそれぞれの状況を踏まえ、発生可能性及び深刻度によるリスク評価を実施。今後優先的に調査を行う事業分野として「外航海運業(船員)」及び「ロジスティクス事業」と、それぞれの潜在的な人権リスクを特定しました。必要に応じ、これらは定期的に見直してまいります。
特定した事業分野ごとの主な人権リスク
事業 | 外航海運業 | ロジスティクス事業 |
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影響を受ける可能性のある 主なステークホルダー *1 |
船員 | 従業員、下請け業者 |
発生する可能性のある 主な人権リスク *2 |
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バリューチェーン全体での人権を含むサステナビリティリスクの把握・低減活動については責任ある調達ページをご覧ください。
船員の基本的権利を定めた、2006年の海上の労働に関する条約(MLC2006)では、強制労働の撤廃、児童労働や差別の廃止等基本的な人権について言及されており、当社グループも遵守を徹底しております。例えば、船上コンプライアンス規程を定め、宗教・国籍・年齢・性別による差別を禁止し、ハラスメントに対する苦情の受付対応手順を定めています。さらに、毎月船内コンプライアンス委員会を開催し、船員と船上コンプライアンスオフィサーのダイアログを通し、人権問題・差別・ハラスメントに対する取り組み状況の確認・評価を行っています。
こうした取り組みを更に推進すべく、以下の通り人権デューデリジェンスを実施しています。
船舶管理会社への書面調査及びヒアリングの実施
2023年度上期において、当社グループの全インハウス船舶管理会社11社に対し、網羅的な人権リスクの把握を目的として書面調査を実施しました。うち日本の2社及びフィリピンの1社については、併せてヒアリングも実施しました。
船員への直接のヒアリングの実施
2023年度下期には当社グループの船員へのヒアリングを実施しました。客観性と中立性を確保する目的で、ビジネスと人権を専門とする第三者の協力のもと、船員の職種・職位・上下関係を考慮しつつ、日本人船員28名、フィリピン人船員60名の生の声を拾っています。匿名性を保ち、またフィリピンでは現地語で実施することで、率直で自由な意見を得ることが出来ました。上期の書面調査結果も踏まえ、労働時間、賃金、健康や安全、職場でのコミュニケーション、救済窓口の活用といったトピックを中心に確認を行うとともに、外国人船員特有のリスクが無いかの確認も併せて行いました。
より重視すべき人権の領域
今回の書面調査・ヒアリングを通じ、より重視すべき人権課題の領域を「労働時間」、「差別・ハラスメント」、「救済へのアクセス」とし、既存の人権課題に対する取り組みを更に推進すべく、引き続き具体的な施策の検討・実行を進めています。
なお、船員に関するその他取り組みについては、以下ページをご覧ください。
人権方針にて児童労働及び強制労働に関与しないことを掲げ、取り組みを進めています。特に児童労働の防止の観点においては、労働基準法を遵守した採用活動を実施しており、採用時には身分証等による年齢確認をすることで取り組みを徹底しています。また、従業員の啓もう活動も重要と考え、人権研修において児童労働・強制労働についても教育を行っています。
バリューチェーン上の取り組みとしては、役目を終えた船舶を解体するシップリサイクルヤードの起用において、実際に現地でヒアリングや視察を行い、児童労働・強制労働等の人権に関する取り組みが十分であることが確認できたヤードを選定することとしています。現状、児童労働・強制労働は発生していないことを確認しています。
当社グループでは各国の最低賃金を含む労働法遵守を徹底しています。また、最低賃金を上回るだけでなく、従業員が安心して働ける生活賃金の保障、優秀な人材確保のために必要な競争力のある賃金体系を構築しています。
なお、同一資格・同一職務レベルにおいては、統一された報酬体系が適用されています。
LGBTQ(性的少数者)の方が働きやすい環境を整備に努めています。差別や理解不足による無意識のハラスメントを防ぐべく研修を実施したり、LGBTQの方が利用しやすい設備の導入に向け本社のリノベーションを進めています。
当社グループは、従業員の心身面の健康障害を未然に防止する観点から、労働時間の適正化に努めています。
施策の詳細については、「健康経営 残業時間の削減」の項目をご覧ください。時間外労働の削減に向けて、様々な施策を実行しています。
当社グループは、お互いの尊厳を傷つけ、職場環境の悪化を招くハラスメントを防止する取り組みを進めています。ハラスメント研修の実施に加え、「ハラスメント防止宣言」を策定し、一切のハラスメントを根絶し、ハラスメントから解放された職場づくりを今まで以上に力強く推進しています。
商船三井グループはハラスメントから解放された健全で活力に溢れる職場づくりを推進するため、次の取り組みを行います。
2020年12月制定
商船三井グループでは、迅速に人権関連の懸念事項に対処すべく、複数の相談・通報窓口を用意しています。
また当社グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した実効的な苦情処理を支援する、一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に正会員として加盟しております。JaCERが提供する「対話救済プラットフォーム」では、当社グループのバリューチェーン上のお客様やお取引先様等あらゆる社外ステークホルダーを対象として、人権に関わる幅広い苦情・通報を受け付けています。通報受付においては、通報者の匿名性や通報内容の秘匿性を確保します。専門的な立場にある第三者を介して苦情を受付けることで、苦情処理の正当性を担保し、公平性・透明性を図りながら適切に対応していきます。また受け付けた事案の要因や頻度を分析し、その結果を必要に応じ、サステナビリティ委員会による監督・指示の下推進している、人権デューディリジェンスにも反映させることで、将来の人権リスクの防止・軽減に努めます。
通報事案の進捗状況については、JaCERのホームページ上で定期的に匿名にて情報開示されます。
対象 | 相談・通報窓口 | 受付内容 |
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グループ役職員向け (派遣社員・契約社員含む) |
コンプライアンスオフィサー (社内) |
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コンプライアンス相談窓口 (社内・社外) |
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ハラスメント相談窓口 (社内・社外) |
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お客様・お取引先様等、 社外ステークホルダー向け |
コンプライアンス相談窓口 (社内・社外) ※問い合わせはこちらから |
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人権に関する社外相談窓口 (社外) ※問い合わせはこちらから |
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JaCERの詳細はこちらをご覧ください。
当社グループのコンプライアンスについてはこちらをご覧ください。
当社は人権研修ならびにハラスメント研修を毎年実施しています。人権やハラスメントに関する法令順守はもちろん、関連する制度や現実に起きている事象・背景とその当事者への理解を深め、当社社員の責任ある行動の基盤となるように構成しています。また、これら研修は企業活動のみならず社員が良き市民として日常生活を送ることも目的としています。
国内外グループ役職員を対象に、人権尊重の取り組みの重要性理解を目的としたe-learningを実施しています(2023年度受講率:94.2%)。強制労働や児童労働といった基本的な人権や当社グループ事業のバリューチェーン上で発生しうる人権リスクについて理解を深めるとともに、当社グループの人権方針へのコミットメントを周知徹底しています。
e-learningの受講率の実績は、サステナビリティデータ集のページをご覧ください。
また、様々な人権侵害の防止のため、管理職向け研修、一般社員向け研修、新入社員向けの階層別研修を実施しています。
ハラスメントに関しては、管理職・非管理職それぞれを対象に、グループ全体でハラスメントから解放された組織を作り、一人ひとりが安心して健やかに活躍できる風土を醸成することを目的としたハラスメント防止研修を実施しています。特に管理職むけには、ハラスメント関連法、パワハラの判断基準(パワハラと指導の違い)、ハラスメントを放置することのリスクについての講義のほか、ハラスメントの実例をもとに適切な対応を考えるグループセッションを通じ、より実効性のある研修内容としました。
当社は、2023年6月1日から7月27日の8回にわたり、特定非営利活動法人経済人コー円卓会議日本委員会主催のステークホルダーエンゲージメント・プログラムに参加しました。本プログラムは、企業による「国連ビジネスと人権に関する指導原則」の理解と実践の場を目的に、様々な業種に属する企業、NPO・NGO、学識・有識者の方々とともに、幅広い人権問題をテーマに議論を行うものです。
2023年度は、国家間の戦闘行為や軍事衝突など国家が関与する人権侵害の疑いのある状況や、AI等のテクノロジーの進化が取り上げられ、それらがビジネスに与える影響や対応策を含め、業界を問わず議論を行いました。
また、同プログラムに参加した運輸・物流企業各社とは、国連環境計画 金融イニシアチブ(UNEP FI)が策定したツールを活用し、「業界毎に重要な人権課題」特定のための議論を行い、運輸・物流業界における人権課題の理解を深めました。
最終報告書については以下をご覧ください。
ステークホルダーエンゲージメントプログラム最終報告
「業界毎に重要な人権課題(第十二版)」
グローバルに事業展開する当社グループにとって、「グループ企業理念の具現化」と併せ、世界のさまざまなステークホルダーと良好な関係を構築し、「社会の持続的成長の具現化」に貢献していくことは、必要不可欠な取り組みです。この取り組みの実現に向け世界の枠組みに寄与すべく、当社は2005年に、国連が提唱するグローバル・コンパクトに日本の船会社として初めて参加しました。
以来、当社役職員が守るべき規範を定めた「行動基準」と共通の理念を持つ、グローバル・コンパクトの4分野10原則の支持、実践に努めています。
当社グループ事業及びバリューチェーン上における強制労働等現代的な奴隷労働や人身取引の根絶に努めるため、英国法「Modern Slavery Act 2015」への対応として、当社ウェブサイト上に“Modern Slavery Statement” (英国現代奴隷法に関する表明(仮訳))を開示しています。