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創立記念日 社長挨拶文

2009年04月01日

当社は、本日創業125周年の記念日を迎えました。創立記念日に際する社長 芦田昭充の挨拶をお知らせします。

商船三井グループの皆さん、本日当社は創業から125年目の創立記念日を迎えました。俗に会社の寿命は30年といわれる中、当社はその4倍以上の長きにわたって、成長・発展してまいりました。今、世の中では100年に一度の経済危機といわれていますが、当社は、1929年の大恐慌のみならず、第二次世界大戦、1970年代の石油ショック、そして、1985年のプラザ合意後の急激な円高など、幾度となく試練を乗り越えて、125年目の創立記念日を迎えているのです。それらの難局を乗り越えるにあたって、忘れてはならない先人の払った大変な試練に思いを巡らせてみたいと思います。

先人の貢献に感謝を
リーマンショック以降、世間では特に雇用問題がクローズアップされていますが、実は当社は20年余り前に深刻な雇用問題に直面しました。その後入社した社員の中には、よく知らない人もいると思いますが、1985年のプラザ合意を引き金とした円高に伴って日本人船員のドル建コストの上昇に苦しんだ当社は緊急雇用対策を実施し、船員の国際化を進めました。結果として当時の当社海上従業員の6割にあたる3,000名を超える方々が、難破しそうになった会社を救うために職場を離れ、当社を身軽にしてくださいました。船員のグローバル化が進み当社の国際競争力が回復したのは、当時の先輩の並々ならぬご苦労と献身によるもので、今日の当社の発展の礎となりました。今このことをもう一度思い起こし、当時当社を去られた方々、ご苦労された方々に対し改めて感謝の念を表したいと思います。私は常にこの20年前の苦しさを忘れず、この会社を、再び雇用に手をつける必要がない盤石な体質を持つ会社にしていきたいと思います。

利益とキャッシュフロー両方を重視
新年度は厳しい環境の中にあっても、これまで積み上げてきた安定利益を基盤に、逆風にもくじけない利益水準を実現したいと考えます。そのためには、市況変動に対する俊敏な対応が必要です。また、金融逼迫の環境下では、キャッシュフローにも十分注意を払っていきたいと考えます。2000年以前の当社は利益水準は低かったものの、既存自社船のリプレースが設備投資の中心であったため、おおむねバランスしたキャッシュフローでした。2000年以降は利益の拡大がキャッシュフローを押し上げてきたため、自己資金で船隊整備を進めることができ、それが経営基盤を大幅に強化しております。しかしながら、当面の景気低迷の中で、発注済みの船隊の受け取りを進めていくためには、営業キャッシュフローを最大化し、財務内容を良好に保つ必要があります。皆さんも日々の営業活動をとおして与信管理の徹底、未収金の早期回収などキャッシュフローを意識した仕事をするように努めてもらいたいと思います。

グローバルな内需という視点
ところで景気後退の下で、日本発着貨物だけを考えると先行き需要規模は小さくなると見る向きが大勢です。しかし、私たちにとっては世界のマーケットが相手です。世界全体の需要が手の届く、いわば“内需”です。大きな舞台で、成長・拡大の大きな可能性が我々を取り巻いています。特に中国、インド、中東、中南米、アフリカといった成長ポテンシャルを持った地域の輸送需要は、世界を相手に活動する当社にとってはまさに巨大な内需ととらえることができます。グローバルな内需の拡大につれて、世界の海上物流も増大していきます。それを確実に取り込むことが当社の成長戦略の要となります。
しかし、グローバルな内需を確実に取り込むためには、当社もグローバルな体制を構築しなければなりません。ご存知のとおり、船員の世界はグローバル化が一歩先に実現しておりますが、全体を見渡すと陸上業務のグローバル体制は整いつつありますがまだまだこれからです。無論、東京本社が司令塔の機能を果たす必要があることはいうまでもありません。しかし、日々のオペレーション、営業活動、バックオフィス業務においては、日本人、日本語にとらわれず、コストに照らして最も適した場所で、最も適した人材によって遂行されることが、グローバルな内需に対応するために不可欠です。
国際海運が、再び成長軌道に戻ったとき、プレーヤーの顔ぶれは相当様変わりしていることが予想されます。コスト競争力を備えた船社のみが生き残る時代となります。そのときに備えて、百尺竿頭尚一歩を進め(*)、コスト削減努力を粛々とかつ大胆に積み重ねていくことが必要です。

(*) 禅語。百尺もある長い竿の先に到達しても、そこに安住することなく、さらに一歩踏み出すことで悟り続けることができる。転じて、努力の上に努力を重ねることでさらに進歩向上することができるという意味。

「 艱難汝を玉にする 」
今のような厳しい環境の下でこそ、社員力は高まると思います。目下の危機は克服するのに相当な努力が必要ですが、若手を鍛える千載一遇のチャンスでもあります。「艱難(かんなん)汝(なんじ)を玉(たま)にする」ということわざがあります。人は苦難を乗り越えることで玉のように磨かれ、立派な人間として成長するものだ、という意味です。
組織人としての皆さんにとって、仕事を進めるにあたり上下関係は大切なポイントです。部下を持つ管理職の皆さんに心がけてもらいたいことは、部下に対するフォローアップを忘れないことです。計画が立派でもそれが実行されなければ意味がありません。計画3割フォローアップ7割といっても過言ではありません。上司は「指示しておきました」で済ませるのではなく、その後の進捗までしっかりフォローアップしてください。また、環境が変われば一度指示したことでも柔軟に見直すリーダーシップも必要です。部下の皆さんに心がけてもらいたいのは、指示待ちに陥らないことです。幹部、中堅、若手の間で風通しを良くし、世界トップレベルの躍動感あふれる会社として社員力を高めてもらいたいと思います。

安全運航の基本は実行力
3月下旬からわが国の護衛艦がソマリア沖で、海賊を取り締まるための警備行動の任務を開始いたしました。海賊被害が多発する中で、われわれの要望が国を動かして実現することができました。安全運航の基本は、役職員一人一人が自らを律して不作為を排し、なすべきことを必ず行うことです。景気後退の局面で優勝劣敗が進む中、国際海運のリーディングカンパニーとして当社がさらに発展するためには、絶対事故を起こさない高いレベルの安全管理と輸送品質の確保が不可欠です。困難な時期こそ決して事故を起こさないよう、各自が決意を新たにして各々の持ち場で安全運航の徹底に努めてもらいたいと思います。

「 Every cloud has a silver lining. 」
今、われわれはこれまで経験したことのない経済危機に直面しております。しかし、英語には「Every cloud has a silver lining.」という表現があります。どんな厚い雲でも上には太陽が燦燦と輝いているという意味です。世界の海上荷動きは一旦は落ち込むものの、必ず世界経済は回復し海上輸送もいずれ成長軌道に戻ります。当社も、現下の荷動き減少への緊急対応のため、船腹調整を進めております。そのため1200隻体制の実現は当初計画の2012年より若干遅れることにはなりますが、船舶管理能力の拡充等の準備は予定通り進めてまいります。世界が再び成長軌道に戻ったときにそれを確実に捉えてさらに発展していくことができるよう、これからも全社一丸となってこの困難な時期を乗り越えていきましょう。
最後に、商船三井グループ運航全船の安全と全世界の当社グループの皆さんとご家族のご健康とご多幸をお祈りして、私の創立記念の挨拶とさせていただきます。