社長就任挨拶

2010年06月22日

社長 武藤 光一

一人ひとりの力を結集し、
持続可能で成長するMOLグループを築く

商船三井社長就任にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
新社長としての私の使命は、言うまでもなく、グループ企業理念に基づき、長期ビジョンである、世界の海運をリードする強くしなやかな商船三井グループを目指すことにあり、中期経営計画である「GEAR UP!MOL」を完遂することでステークホルダーの期待に沿うことにあります。

2008年秋に起きたリーマンショックは、世界的規模で金融だけでなく実体経済の収縮をも引き起こしました。その停滞は当初かなり長引くのではないかと予想しましたが、事業分野にばらつきはあるものの、新興国の経済成長にも支えられ、前倒しの回復となりました。依然懸念材料はあるものの、現在の見通しは、中国を中心に海上輸送需要は伸び続け、新造船供給を吸収し、海上運賃マーケットは多少の上下はあるものの総じて中位レベルで推移するであろうというものです。中期経営計画GEAR UP!MOLもそのような環境を前提として策定致しました。

海上輸送需要はまだまだ成長し続けます。このような我々を取り巻く環境下、MOLグループは、長期ビジョンにあります通り、海運事業をグループのコアビジネスとして定め、世界の海運をリードする役割を担うことで、世界経済の発展に貢献し続けます。

その為に私は4つの基礎の強化を図っていきたいと考えております。

第一の基礎は信頼の確保です。安全運航における信頼、お客様からの信頼、会社の財務上の健全さに対する信頼です。安全運航におけるお客様からの要請が高まりつつある中で競合他社との差別化を図るべく、MOLグループとして現状に満足することなく全力で安全運航の達成に向けて取組んでいく決意を新たにしたいと思います。又、お客様の要望に対し、お客様の立場になって考え、徹底したサービス精神でお応えし、お客様の信頼を得て参ります。リーマンショック後、世界中の多くの海運企業が財務的な困難に直面してきている中、MOLグループは比較的優位な立場にあり、今後も財務上の健全性も更に強化し、お客様より安心して貨物を預けられる会社にして参ります。「お客様の信頼を得る」をキーワードに世界の海運マーケットをリードしていきます。

第二の基礎は、適切なる事業領域の選択および事業拡大のタイミングであります。それはすなわちグループ企業理念に書いておりますが、顧客のニーズと時代の要請を先取りすることです。どんな事業分野が将来拓けるか、有望であるか、お客様との対話を繰り返しながら、様々な情報を集め、自らの世界観、歴史観、経済の知識、見識より生まれる大局観で判断していきます。その正しい判断は、お客様のニーズにお応えし、世界経済の発展に貢献すると共に、我々に利益をもたらします。

その判断にあたっては、トータルリスクコントロールを重視します。ゴーイング・コンサーン(継続企業)として、永続的に繁栄する会社である事が必須条件であると考えます。リスクのない利益を生む事業機会(チャンス)というものは存在致しません。取るべきチャンスはリスクと共に取りに行き、そのリスクに耐えられるようポートフォリオ経営に磨きをかけて参ります。各海運事業分野の規模を適切に保ち、安定収益と変動するマーケット連動収益のバランスを考え、自己資本に見合った総事業規模を維持することなどにより想定される最悪の事態が生起しても持ち堪える企業体としておくことが、全てのステークホルダーに対する経営の責任と考えております。

前述した事業環境においてどう運営して行くかについては、個別には様々な展開があると思いますが、当面投資については慎重且つ時機を逃さぬ取組みを図ります。一方、安全運航、営業体制、管理部門の効率化など、更なるグローバル展開とも併せ、足腰を強くすることに注力して行きたいと思います。

第三の基礎は地球環境の保全です。これからは、益々伸びて行く海上輸送需要に応えつつ、地球環境の保全にも努めなければならないと考えております。安全運航実現による環境保全への貢献はもとより、地球温暖化ガスの削減にも積極的に取組んで参ります。現在、環境に優しい次世代船ISHIN PROJECTを推進中ですが、増大する輸送需要に応えつつCO2削減を図る最も効果的な方法は、より大きな船でゆっくり運ぶ事になるのではと考えております。船の場合、わずかのスピードを上げるために増速比の累乗で増える二酸化炭素の大気中排出という環境負荷をかけることになります。お客様のご理解を得てより地球に優しい船会社になる努力を続けていきたいと思います。

最後の基礎は、人であります。いかにMOLグループ従業員が活き活きと使命感を持って働く事ができる職場を提供できるかが社長として重要な使命の一つであり、ひいてはステークホルダーの要請にお応えすることに繋がると考えております。企業は組織ですので、チームプレーにより個人では出来ない大きな成果を出し、達成感を共有できる舞台であると思います。グループで働く一人ひとりが納得でき共有できるゴール、方針の設定、浸透によりベクトルを合わせて行く為に、徹底したコミュニケーションを追求します。グループの一人ひとりが正しい目標・方針を持ちつつ一日一日自分の仕事の成果が企業価値を生んでいるという実感を持つことが、即ち一層の企業価値向上を実現する原動力であると確信しております。

最後に、グループ企業理念にもある通り極めて大切なことですが、日々の行動において法律はもとより社会規範と企業倫理をしっかり自覚し遵守し、これを全ての行動の基盤とすることを、グループで働く役員・従業員が一人も欠けることなく共有し続けていくことを確認したいと考えます。

企業価値向上や社会への貢献のため、MOLグループとして進むべき針路を明確に示し、その舵取りを担う決意を新たに、本日社長としてのスタートを切ることと致します。皆様のご支援をお願い申し上げます。