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AIの基盤技術による自動車運搬船の配船と貨物積み付け計画の策定に成功
~「数理最適化」を活用して計画の立案や検証を大幅に効率化~

2019年09月30日

株式会社商船三井(本社:東京都港区、代表取締役社長:池田潤一郎、以下「当社」)とグループ会社の商船三井システムズ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:吉田毅)は、大阪大学大学院情報科学研究科の梅谷俊治准教授(註1)と共に、AIの基盤技術の一つである「数理最適化」(註2)を活用して、従来よりも短時間で自動車運搬船の配船計画、および貨物積付計画(註3)を策定することに成功しました。

当社が運航する自動車運搬船はおよそ100隻あり、1隻で輸送できる自動車は普通乗用車に換算して概ね5000台前後です。近年、自動車メーカーをはじめとする荷主の輸送・物流パターンは多様化傾向にあり、お客様のニーズを満たす当社船隊の最適な運用には効率的な配船と貨物の積み付けが必要不可欠です。例えば、複数港で積んで複数港で揚げるようなケースでは、それぞれの貨物をどのデッキ・ホールドに積載配置するのかという選択が、荷役の安全性と作業効率に大きな影響を与えます。加えて、貨物の積み揚げの順序と航海中の船体バランス等も考慮に入れる必要があるため、貨物積付計画の作成にかかる時間はその難易度と担当者の熟練度に応じて長くなる傾向にありました。

本研究では、梅谷俊治准教授の協力のもと、数理最適化を用いて膨大な組み合わせから効率的に計画案を求めるアルゴリズムを開発しました。今後は実務における適応性を見極め、急な輸送量の変更や寄港順の変更の際にもお客様への回答に要する時間を大幅に短縮することで、デジタライゼーションを通じたサービスの改善を目指します。

商船三井グループは、ICT技術の利活用を積極的に進め、各部門が持つ叡智を結集し、物流のビジネスパートナーとしてお客様に選ばれる企業グループを目指します。

(註1)梅谷俊治准教授
梅谷俊治准教授は、2003年に京都大学で情報学の博士号を取得、2008年から大阪大学大学院情報科学研究科にて現職に就く。専門は組合せ最適化であり、実世界から収集された大規模データに基づく大規模かつ多様な組合せ最適化問題に対して実用的な解を効率的に求めるアルゴリズムの開発に従事している。また、産学連携を通じて、数理最適化を活用した現実問題の解決に積極的に取り組んでいる。

(註2)数理最適化
意思決定・問題解決のための一つの手段で、制約条件を満たす解の中で最適な解を求める。資産運用、配送計画、電力運用、スケジューリングなど幅広い分野で活用されている。

(註3)貨物積付計画
貨物の高さ・重さ・面積・台数・積港・揚港の組み合わせがそれぞれ異なる車両を、巨大立体駐車場のような自動車運搬船に配置するプランのこと。貨物である車両は積載位置まで自走するため、積み揚げのタイミングでは搬入出経路が通行可能になっている必要がある。また、航海中の船体復原性及び荷役安全性を考慮して、貨物積載位置(デッキ・ホールド)を調整しなければならず、急な台数の変更や寄港順の変更があった場合には、プランを作り直す必要がある。


荷役作業のため、ターミナル着岸中の自動車運搬船(FLEXIEシリーズ船2隻)


積付計画に従って、実際に車両を積み込んでいく様子

積み込み予定の車両をどのデッキ・ホールドに積載配置するかの計画(イメージ)