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創立記念日 社長メッセージ

2021年04月01日

2021年4月1日より株式会社商船三井の社長に就任した橋本剛による全役職員向け「創立記念日 社長メッセージ」を下記の通りお知らせします。

次の10年、さらなる飛躍のために

池田前社長からのバトンを引き継ぎ、社長として商船三井グループの経営の舵取りを務めます。皆さんどうぞ宜しくお願いします。

(橋本新社長の創立記念メッセージ動画配信中の様子)

2021年度を新体制でスタートするにあたり、10年単位で当社グループの近年の歴史を振り返ってみたいと思います。2000年代の10年間は1999年の大阪商船三井船舶とナビックスラインの合併が成功し、中国を筆頭とする新興国の急成長の波を捉えて船隊規模を拡充し、当社グループは大きな成長を遂げました。2010年代の10年間は急拡大の反動による市況低迷と業績悪化に苦しみ、安定利益を重視する事業への構造変革を遂げました。そしてこれからの10年、私たちはここから新たな成長を目指すステージに居ます。環境意識の高まりやIT産業の急成長などによる価値観の急激な変化が起きている状況の下、次の10年の当社グループの成長戦略を手掛けていくことに、責任の大きさとやりがいを感じているところです。皆さんと共に、常に10年先を意識して綿密に戦略を立て思い切りよく実行していきたいと思います。

2020年度はいろいろな意味で変化の節目となった年でした。当社業績も、新型コロナウィルスの世界的感染拡大により期初はかなり悲観的な想定をしました。産業界を見渡せば、非常に厳しい状況を余儀なくされている業界もありますが、海運業界は年度初めのタンカー市況の高騰や、年度後半からのコンテナ船事業の好調に支えられ、久々の好決算となる見通しです。好収益自体は喜ばしい限りですが、この状況がサステナブルかというとそうではありません。コロナショックの下で物流に大きなひずみが生じた結果、その影響をやや極端な形で受けている面があると認識すべきでしょう。ひずみが解消する過程で揺り戻しが起こるかもしれず、この現象が去った後のことを今から考えておく必要があります。長期に及んだ在宅勤務や会議・出張・会食などの制限が、仕事の進め方に変化をもたらし、デジタル化を促進したことも重要な変化です。コロナショック下のビジネス、とりわけ物流への影響は依然懸念されます。過度な不安を抱く必要はありませんが、アンテナを高く張って必要な対策をタイミングよく打っていくことが重要だと考えます。


次の10年に備えた体制作り

そして2021年度からの10年は、世の中はさらに速いスピードで一層大きく変わっていくとみています。環境意識の高まりのみならず、様々な価値観の変化の兆しは既に至るところに現れています。4月からの新体制を率いる上で、次の10年の変化を見据えていくことを強く意識して経営に臨むと同時に、皆さんもそれぞれの持ち場で新たな気持ちでスタートしてほしいと思います。

新たな気持ちで、といえば、本日4月1日付けで新しいグループ企業理念とグループビジョンを制定しました。新しいグループ企業理念「青い海から人々の毎日を支え、豊かな未来をひらきます」は当社グループの存在意義をシンプルに示しています。グループビジョンは「海運業を中心に様々な社会インフラ事業を展開し、環境保全を始めとした変化する社会のニーズに技術とサービスの進化で挑む。商船三井は全てのステークホルダーに新たな価値を届け、グローバルに成長する強くしなやかな企業グループを目指します」です。グループビジョンは網羅的かつ具体的に当社グループとして目指す姿を表現し、これを後述するローリングプラン2021(以下、RP2021)で掲げる「10年後のありたい姿」とも一致させています。またMOL CHARTに”S” = Safetyを加え、MOL CHARTSとします。昨年のWAKASHIO事故を契機にあらためて安全に対する意識を高めるだけでなく、世界最高水準の安全品質を追求するという誓いを当社の価値観に反映させるものです。グループ企業理念に共感しここに集う私たちが、MOL CHARTSという共通の価値観をもって、グループビジョンへの到達に向け、RP2021とサステナビリティ課題という具体的な戦略に取り組み、企業価値の向上を実現していきたいと考えています。


RP2021の全体方針

RP2021の策定に当たっては次の10年間に起きる事業環境の変化を考え、環境戦略と地域戦略という全社的テーマを横軸、各事業部門の成長戦略を縦軸としての議論を重ねてきました。この後、日を置かずに発表することになりますが、ここではその全体方針についてごく簡単に紹介します。

まず環境戦略においては、加速する世の中の動きも踏まえ昨年6月に発表した当社グループ「環境ビジョン2.0」を見直し、「環境ビジョン2.1」にアップデートしていきます。「2.1」では当社グループが事業を通じて排出する温暖化ガスの削減目標を、2050年までにネットゼロを目指すところまで前倒しします。同時に当社グループ独自の長期的な排出削減ロードマップを公開し、ロードマップ達成に向けた5つの戦略の実行を加速させていきます。また、本格的な脱炭素時代の到来までは低炭素エネルギー源としてのLNGの需要が高まると見ており、その輸送等の需要を取り込むことは勿論ながら、当社船隊のLNG燃料船への代替やその他の代替燃料船の導入、再生エネルギー事業への投資を推進していきます。また、今後の投資判断に、将来のカーボンクレジット導入を見据えた基準を策定します。

地域戦略は営業戦略の重要な一面です。経済成長が見込める最重点地域であるアジア、とりわけインド・中国での事業展開にしっかり取り組みます。既存事業を磨き、顧客満足度を向上させることで収益を上げる一方、緻密な戦略のもと有望なターゲットを見定めて新しいビジネスにも果敢にチャレンジしていきたいと考えています。攻めの姿勢の一方で、限りある経営資源の最適配分は常に必要な条件であり、事業ポートフォリオの適正な管理、投資の選別を継続していきます。また当社の内面からの経営資源強化策として、「組織の力の向上」にも継続して取り組みます。既存組織やグループ各社の垣根を超えた協業を進めていきますが、さらに生産性を向上させるために本社のみならず、関係会社、海外拠点にまたがるグループ内のコミュニケーションの重要性も高まっていくと考えます。

私はこれまで特にエネルギー関連の事業に長く携わってきたなかで、大事にしてきたことは、事業の成長性、先進性、そして強靭性であります。確かな予測に基づき成長性を見定め、人に先んじて実行する一方、二の矢、三の矢を準備して状況変化にも対応できる、そう簡単には行き詰らないし、倒れない体制を整えて、プロジェクトを軌道に乗せていく。これらは今回グループビジョンにも掲げており、変化の激しい次の10年を切り拓いていくなかでとても重要な要素であると考えています。皆さんの日々の業務においても活かせる部分はあるはずで、ぜひ良く考えて実践していってほしいと思います。


ステークホルダーの期待に応える

最後に、今一度昨年のWAKASHIOの座礁・油濁事故に触れたいと思います。私たちはこの事故を通して企業としての社会的責任について深く考えさせられました。社会的責任を果たすとは、私たちが顧客、取引先、株主、従業員、そして地域社会など、当社事業にかかわる全てのステークホルダーの期待に応えていくということです。当社事業の基盤である安全品質の向上、コンプライアンスの順守は当然の事として、それに止まらず広範なステークホルダーの期待に応える事業運営をしていくことが、特に強く求められることだと考えます。ステークホルダーから何を求められ、何を期待されているのか、常日頃から考えていきたいと思います。

変化を恐れて立ち止まっていては豊かな未来は切り拓けません。変化を前向きに捉え、自らを変容させていくことでこの荒波を皆さんとともに乗り切っていきたいと思います。それでは新年度とこれから始まる次の10年、共に頑張っていきましょう。