2022年01月25日
株式会社商船三井(社長:橋本剛、本社:東京都港区、以下「当社」)、商船三井グループ二社および以下コンソーシアム企業(以下「当コンソーシアム」)は、公益財団法人 日本財団が推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」(以下「MEGURI2040」、註1)の一環として、1月24日と25日に福井県敦賀港から鳥取県境港において、世界で初となる商業運航コンテナ船による無人運航実証実験に成功しました。
MEGURI2040の中でも、当コンソーシアムが取り組む無人運航船プロジェクトは、以下の2点が大きな特徴です。
(1)「内航コンテナ船」と「内航フェリー」という特徴の異なる2隻で実験を行い、両船型の相違点や共通点を明らかにすることで、汎用性のある技術開発に繋げること。
(2)係船作業の自動化を目指して、ドローンを用いた係船実験を行うこと。
2020年にMEGURI2040が開始されて以降、当コンソーシアムでは無人運航船の実現に向け、各種要素実験に取り組んできました。2021年10月には、MOLマリン&エンジニアリング株式会社が所有するシミュレーターを使用して安全検証を行った上で今回の実験に臨みました。
(コンソーシアムメンバーおよび主要役割)
会社名 | 主要役割 |
---|---|
当社 | 全体コーディネーション、リスク評価 |
三井E&S造船株式会社 (社長:船津勇、本社:東京都中央区、以下「三井E&S造船」) |
「判断」「操作」機能の開発 (避航操船、港内操船、離着桟操船の自動化) |
古野電気株式会社 (社長:古野幸男、本社:兵庫県西宮市、以下「古野電気」) |
「認知」機能の開発 (認知センサー統合、離着桟支援センサー) |
井本船舶株式会社 (社長:井本隆之、本社:兵庫県神戸市、以下「井本船舶」) |
実証船・船員提供、運航計画作成 |
株式会社A.L.I. Technologies (社長:片野大輔、本社:東京都港区、以下「A.L.I.」) |
係船支援技術の開発 (ドローンを用いたヒービングラインの岸壁投下) |
商船三井フェリー株式会社 (社長:尾本直俊、本社:東京都千代田区、以下「商船三井フェリー」) |
実証船・船員提供、運航計画作成 |
MOLマリン&エンジニアリング株式会社 (社長:中島孝、本社:東京都港区) |
自動避航操船・自動港内操船・自動離着桟の シミュレーション作成 |
無人運航実証にあたっては、三井E&S造船が開発した自律操船制御システムを用いて、以下の要素を考慮しながら事前に策定したルートに沿って、航行しました。
設定した航路上に他船や障害物がある場合は、それらの情報を古野電気が開発した自船周囲情報統合システム(レーダー・AIS・カメラ画像認識から得た情報を統合し他船や障害物の位置、速度、船種等を計測・表示する装置)によって把握し、その情報を基に自律操船制御システムが策定した安全な避航ルートを航行しました。
自動離着桟においては、特に繊細な操船が必要となることから、古野電気が開発した離着桟支援センサー(LiDAR・カメラ・サテライトコンパスで得た情報から岸壁と船体の正確な相対距離、相対角度を計測・視覚表示する装置)からの情報を自律操船制御システムで用い、離着桟を行いました。
当コンソーシアムの取り組みの特徴の一つである「係船作業の自動化」については、通常の着桟作業では、乗組員が係船索(船を港に係留するための綱)を投てきして岸壁にいる作業員へ渡しますが、今回の試験ではA.L.I.が開発した自動飛行ドローンが係船索を岸壁へ運搬しました。今後技術を成熟させていくことで、船員の高齢化が進む中で負担の大きい係船作業の代替手段となることが期待されます。
当コンソーシアムでは汎用性の高い技術開発に向け、今後は内航コンテナ船と特徴の異なる内航カーフェリー「さんふらわあ しれとこ」を用いた無人運航実験も予定しています。
(内航カーフェリーを用いた無人運航実験の予定)
実証船 | 船種 | 実証航路 | 実証予定時期 |
---|---|---|---|
さんふらわあ しれとこ (商船三井フェリー保有船) |
内航フェリー | 苫小牧→大洗 | 2022年2月 |
当コンソーシアムは、引き続きMEGURI2040における無人運航船実現に向けた活動を通して、船員の労務負担軽減と、安全で安心な海上交通を目指します。
(註1) 2020年6月15日付プレスリリース「始動!自律化実現への実証航海~日本財団と無人運航船の実証実験にかかる技術開発助成契約を締結~」をご参照ください。