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革新的な炭素除去技術の普及・促進を目的としたNextGen CDR Facilityが技術系CDRクレジットの長期購入契約を締結

2023年04月26日

株式会社商船三井(以下、「当社」)は、かねてより大気中の二酸化炭素除去に関する革新的な技術(以下、「技術系CDR(註1)」)の普及・促進を目的としたカーボンクレジット共同購買事業NextGen CDR Facility(以下、「NextGen」)にバイヤーとして参加しています。(註2) この度NextGenは、以下3つのプロジェクトから世界最大規模となる累計約20万トンの技術系CDRクレジットの長期購入契約を締結しました。今後2025年迄に累計100万トン以上の技術系CDRクレジットの購入を目指し、同市場の拡大を支援していきます。

  • 米Summit Carbon Solutions社が推進する世界最大級のBiomass Carbon Removal and Storage (BiCRS) (註3)プロジェクト
  • 米1Point Five社が推進する世界最大級のDirect Air Capture and Storage (DACS)(註4)プロジェクト
  • フィンランドCarbo Culture社が推進するバイオ炭(註5)プロジェクト

NextGenは世界最大手のカーボンクレジット創出を手がけるスイスのSouth Pole社と三菱商事株式会社が運営し、バイヤーとして参加する企業が技術系CDR由来のカーボンクレジットを共同購買する取り組みです。NextGenには、当社に加えてCDR業界を牽引するボストン・コンサルティング・グループ(BCG)、LGT、Swiss Re、UBSがバイヤーとして参画しています。NextGenは、国際的な品質基準であるICROA(註6)に準拠し、第三者認証を取得した高品質な技術系CDRクレジットの買い手と売り手(プロジェクト)をつなぐことにより、市場の拡大に寄与します。また、クレジットの目標平均価格を市場価格比競争力のあるUS$200/トンに設定し、企業が長期的に技術系CDRクレジットを調達できるモデルを導入することで、より多くの買い手が市場にアクセスしやすくなる仕組みを構築します。NextGenに参加する企業は、NextGenを通じてBiCRS、DACS、バイオ炭を始めとする多様な技術系CDRからなるポートフォリオを構築することが可能になります。

<NextGen CDR Facilityの概要>

2023年3月に発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の統合報告書では、産業革命前からの地球の気温上昇を1.5度以内に抑えるために必要なCDRの普及が世界的に「大幅に不足している」と強調されています。気候変動の深刻な影響を回避するためには、2030年迄の間に年間約10億トンのCDRを新たに追加する必要がありますが、市場はまだIPCCが求めるレベルに達していません。今回のNextGenによる技術系CDRクレジットの購入量は、これ迄の同市場の全ての累計取引量の約25%を占め、同市場拡大に向けた大きな試金石となると共に、2025年迄に累計100万トン以上の技術系CDRクレジットの購入契約を締結するというNextGenの目標達成に向けた取り組みの始まりです。

本件は、当社が2050年までのネットゼロ・エミッション達成と、人・社会・地球のサスティナブルな発展を実現するための新たな道標として策定した「商船三井グループ 環境ビジョン2.2」のアクション4「ネガティブ・エミッションへの取り組み」に貢献するものです。当社はNextGenを通じて、技術系CDR市場を創出・牽引することで、世界の低・脱炭素化に貢献してまいります。

各社からのコメント

商船三井 – 代表取締役社長 橋本 剛
CDRクレジットの購入を通じて先進的な技術系CDRを支援することで、気候変動問題への具体的な取組を着実に進めていることを大変嬉しく感じています。2050年までのネットゼロ目標を達成するためには、科学的根拠に基づいた排出量の削減を行うことが不可欠であり、当社にとっての最優先事項です。しかし、それだけではもはや十分ではありません。私たちはCDRクレジットの購入を通して、自社のバリューチェーンを超えた気候変動対策を支援し、1.5度目標を実現できる可能性を高めていきます。そして、次世代を生きるすべての生命のために、人と社会と地球の持続可能な成長に貢献してまいります。

BCG – Chief Sustainability Officer, David Webb
大気中の二酸化炭素を恒久的かつ大規模に除去することはネットゼロおよびパリ協定を達成するために不可欠です。私たちはNextGenのアンカー・バイヤーとして、先進的な技術系CDRの普及に貢献できることを誇りに思います。本日の発表は革新的な気候変動技術の潜在能力を引き出すための大きな一歩となります。

LGT – Chairman, H.S.H. Prince Max von und zu Liechtenstein
今回のNextGenによる3つの革新的なプロジェクトからの技術系CDRクレジットの長期購入契約締結に関する発表はアンカー・バイヤーである私たちにとっても重要な第一歩です。私たちはCDRが気候目標を達成するための重要なソリューションの一つであると確信しています。拡張性のあるソリューションに対して協調的なアクションをとり、適切なプロジェクトへの投資を行っていくことで初めてネットゼロ目標が達成できると考えており、NextGenはまさにその為のアプローチを私たちに提供するものです。

UBS – Chief Sustainability Officer, Michael Baldinger
本日の発表は技術系CDRの普及に向けた大きな一歩です。NextGenのアンカー・バイヤーとして市場に確実性を提供することは、UBSとして革新的な気候変動技術の発展に貢献するための一つの方法です。私たちは2050年迄のネットゼロ達成に必要なソリューションと連携して気候変動対策に取り組んでいくことを約束致します。

South Pole – Chairman of NextGen and Global Director of Tech Carbon Removals, Philip Moss
技術系CDRの市場規模を拡大するNextGenの取り組みは今回の購入によって大きく前進し、2025年までに100万トンの技術系CDRクレジットを購入する目標実現のための明確な道筋ができたことになります。これらの先行購入は、炭素除去の独立した認証を保証することで品質基準を確立するだけでなく、バイヤー各社のコミットメントにより、台頭する多くのCDRプロジェクトや歴史的排出を除去する技術への資金調達が可能になります。

三菱商事 - 常務執行役員 次世代エネルギー担当 齊藤 勝
CDRの普及は低・脱炭素社会実現の為に不可欠であり、今回のNextGenの発表に関与できることを誇りに思います。今後もNextGenの更なる発展の為に当社の知見を活かして貢献して参ります。当社は持続可能な社会の実現に向け、イノベーションとコラボレーションによる低・脱炭素化に貢献して参ります。

プロジェクトからのコメント

Summit Carbon Solutions – CEO, Lee Blank
今回の発表はSummit Carbon Solutionsにとってとても歴史的なことです。ボランタリークレジット市場は非常に重要なツールで、同市場を通じてCDRプロジェクトに資金提供を行うことで、GHG排出量削減及び長期的な環境改善に寄与することができます。NextGenのような取り組みは、Summit Carbon Solutionsのように大規模且つ革新的なプロジェクト成功の為にとても重要です。

Summit Carbon Solutions – Chief Commercial Officer, Jim Pirolli
世界のカーボンクレジット市場には大きな変革が起きており、カーボンクレジットの需要家は、将来の気候変動対策に繋がる革新的なプロジェクトの高品質な技術系CDR購入を好むようになってきています。今回の技術系CDR購入を通じて、NextGenとそのバイヤーは技術系CDRの大規模実装に向け大きな一歩を踏み出しました。私たちのプロジェクトが今回の歴史的な世界最大規模の技術系CDR取引の1つに選ばれたことを嬉しく思います。

1PointFive – President and General Manager, Michael Avery
大規模DACはネットゼロ達成の為に必須な技術です。また、世界の低脱炭素目標を達成する為に高品質な技術系CDRクレジットは必要不可欠であると私たちは確信しています。

Carbo Culture – CEO, Henrietta Moon
今、世界はネットゼロを達成する為に、二酸化炭素の排出削減と除去の必要性に気付き始めています。NextGenは今必要とされる低脱炭素領域での信頼できるオフテイク契約による波及的な効果を示す素晴らしい事例です。

Carbo Culture – Director of Carbon Markets, Tim Preisenhammer
数年前、CDRクレジットを購入している企業は極めて限定的でした。今回のNextGenによる購入契約締結は高品質な技術系CDRが市場に定着する為の明確なシグナルであり、技術系CDR産業発展の為のCatalystとなるでしょう。

<Summit Carbon Solutions>

(提供: Summit Carbon Solutions)

<1PointFive>

(提供: 1PointFive)

<Carbo Culture>

(提供: Carbo Culture)

South Poleについて
世界経済フォーラムのシュワブ財団によって認められた社会的企業であり、世界有数の気候ソリューションを提供しカーボンプロジェクトの開発を行なっています。2006年の設立以来、50カ国以上で約1,000のプロジェクトを開発し、CO2換算で累計210億トン以上のCO2 GHG排出量削減に貢献した実績を持つとともに、気候変動に対して特に脆弱な地域社会に社会的利益を提供しています。プロジェクトは持続可能な農業、森林保全、廃棄物管理、エネルギー効率化、分散型再生可能エネルギーなど多岐にわたります。またネットゼロを達成する為のサステナビリティの取組みについて何千もの大手企業にアドバイザリーを提供するとともに、世界中の企業、政府、組織に対して気候変動対策を長期的なビジネスチャンスにつなげる包括的な戦略を開発し、実施しています。South Poleは豪州、米国、オランダ、ドイツで取得しているB Corp認証に加え、世界各地のすべての現地法人でのB Corp認証取得に取り組んでいます。
https://www.southpole.com/japan

三菱商事について
三菱商事は、世界中に広がる当社の拠点と連結事業会社と協働しながらビジネスを展開しています。天然ガス、総合素材、化学ソリューション、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発の10グループに産業DX部門、次世代エネルギー部門を加えた体制で、幅広い産業を事業領域としており、貿易のみならず、パートナーと共に、世界中の現場で開発や生産・製造などの役割も自ら担っています。
これからも私たちは、常に公明正大で品格のある行動を信条に、豊かな社会の実現に貢献することを目指し、さらなる成長に向けて全力で取り組んでいきます。
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/

商船三井について
商船三井は日本に本社を置き、世界中で約800隻の船舶を運航する世界有数の海運会社です。商船三井は、環境保全など刻々と変化する社会のニーズに応えるため、海運を中心にさまざまな社会インフラ事業や技術・サービスを展開しています。商船三井の船隊には、ドライバルク船、LNG船、自動車船、タンカーなどが含まれます。また従来の海運事業に加えて、ターミナル、物流、洋上風力発電、などの社会インフラ事業と共に、不動産、クルーズ、フェリーなどのウェルビーイングライフ事業も展開しています。世界最大級の船隊と、約140年の歴史、経験、技術をもって展開する活動に、国境はありません。私たちは、グローバルな社会インフラ企業へと飛躍し、青い海から人々の毎日を支え、豊かな未来をひらき、全てのステークホルダーに新たな価値を届けてまいります。
www.mol.co.jp

BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)について
BCGは、企業や社会のリーダーが最も重要な課題に取り組み、最大の機会を獲得するためのパートナーです。BCGは、1963年の設立以来、ビジネス戦略のパイオニアとして活動しています。今日、私たちはクライアントと密接に連携し、すべてのステークホルダーに利益をもたらすことを目的とした変革的アプローチを採用し、組織の成長、持続的な競争優位の構築、社会へのプラスのインパクトの推進に力を発揮しています。BCGの多様なグローバルチームは、業界や機能に関する深い専門知識と、現状に疑問を投げかけ変化を促すさまざまな視点を持ち合わせています。BCGは、最先端の経営コンサルティング、テクノロジーとデザイン、コーポレートおよびデジタル・ベンチャーを通じてソリューションを提供します。私たちは、クライアントの成功を支援し、世界をより良い場所にすることを目標に、ファーム全体およびクライアント組織のあらゆるレベルにおいて、独自のコラボレーションモデルで業務を行っています。
www.bcg.com

LGT(Liechtenstein Global Trust)について
LGTは、90年以上にわたってリヒテンシュタイン公家が全ての経営権を持つ、国際的な大手プライベートバンキングおよび資産運用グループです。2022年12月31日現在、LGTは個人富裕層や機関投資家のために2,872億スイスフラン(3,140億米ドル)の資産を運用しています。LGTは、ヨーロッパ、アジア、アメリカ、オーストラリア、中東の25以上の拠点で、4100人以上の従業員が働いています。
www.lgt.com

Swiss Reについて
Swiss Re Groupは、再保険、保険、その他の保険ベースのリスク移転を提供する世界有数の企業であり、世界をより強靭なものにするために活動しています。自然災害から気候変動、高齢化社会からサイバー犯罪に至るまで、様々なリスクを予測し、管理しています。Swiss Re Groupの使命は、社会の繁栄と発展を可能にし、お客様のために新たな機会と解決策を生み出すことです。Swiss Re Groupは、1863年に設立されたスイスのチューリッヒに本社を置き、世界約80カ所の拠点を通じて事業を展開しています。
www.swissre.com

UBSについて
UBSは人々とアイデアが結び付き機会が生まれるグローバルな投資のエコシステムを生成するべく力を尽くしています。UBSは、世界中の富裕層、機関投資家及び企業の顧客、そしてスイスの個人顧客に投資にかかるソリューション、金融商品、そして深い知見に基づいた情報を提供する世界トップクラスのウェルス・マネージャーであり、幅広い資産クラスの多岐な運用ソリューションを提供する世界最大級のアセット・マネージャーです。専門的な証券事業を擁し、スイスでは個人や企業顧客に対して銀行サービスを提供しています。UBSの事業戦略は、対象とする市場において特に競争力があり、資本効率が高く、長期で構造的な成長/利益を見込むことができる事業に経営資源を集中することです。
スイスのチューリッヒに本拠を置くUBSは、世界の主要金融センターを含む50以上の市場で事業を展開し、72,000名超の従業員を擁します。内30%が米州、29%がスイス、20%がスイス以外の欧州・中東・アフリカ地域、21%がアジア太平洋地域に在籍しています。UBSグループAGの株式はスイスおよびニューヨークの各証券取引所に上場されています。
www.ubs.com

(註1) Carbon Dioxide Removal(二酸化炭素除去)の略。CDRには森林やブルーカーボン等自然界のCO2吸収を増やす自然ベースのものと、化学工学的技術を使って大気中からCO2を除去する技術ベースのものに二分され、本件は後者。

(註2) 詳細は以下プレスリリースをご参照ください。
https://www.mol.co.jp/pr/2022/img/22067.pdf

(註3) バイオマス由来のCO2を回収・貯留する技術

(註4) 大気中のCO2を直接回収し貯留する技術

(註5) 高温でバイオマスを炭化し炭素を固定する技術

(註6) International Carbon Reduction and Offset Allianceの略