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世界初 “発電船から電力供給する洋上データセンター”を共同開発
~AI需要に対応するデジタルインフラを提供~

2025年07月07日

株式会社商船三井(社長:橋本 剛、本社:東京都港区、以下「当社」)は、世界最大級の発電船事業などを手掛けるKaradeniz Holding 傘下のKinetics technologies holdings limited (CEO:Mehmet Katmer、本社:英国王室属領マン島、以下「Karadeniz」、読み:カラデニス、註1)と、“発電船から電力供給する洋上データセンター”の共同開発に向けた基本合意書(Memorandum of Understanding:MOU)を締結しました。

発電船と洋上データセンターのイメージ
発電船の写真(引用:https://karpowership.com/

本プロジェクトは、発電船からの電力供給で洋上データセンターを運用する世界初の事業モデルの構築を目指すものです。当社の中古船を再利用して洋上データセンターを建設し、Karadenizの発電船から電力を供給することで、生成AIの普及などで急増するデータ処理ニーズに対応します。現状、生成AIの登場でデータセンターの需要は急増している(註2)一方で、供給側では都市部での電力不足や土地不足、さらには冷却に使用する水不足が顕在化しています。洋上データセンターと発電船の統合事業モデルは、こうした資源不足を解消し、今後AIの普及とともに社会に不可欠となる新たなデジタルインフラを迅速に提供します。

今回のMOUを契機として、2027年の運用開始に向け、洋上データセンターとKaradenizの発電船の統合コンセプト設計の評価等 技術的検証を行う予定です。

【陸上データセンターと比較した際の洋上データセンターのメリット】

  • 発電船と組み合わせることで、地域電力から独立して運用可能。
    米国では電力会社側の供給が追い付かず、データセンターの運用開始までに5年以上の待ち時間が発生するケースもあります。こうした電力ひっ迫地域でも、即時にデータセンターの運用を開始できます。
  • 都市圏周辺での大規模な土地の確保および土地の取得費用が不要
  • 建設期間の短縮
    洋上データセンターの改造工事は1年程度で、従来の陸上データセンター開発と比較して開発期間を最大3年短縮できる可能性があります。
  • 移設可能
    中古船をベースとする洋上データセンターは浮体式のため、需要の変化に応じて稼働場所を変更することが可能です。また、条件によっては、通常の船のように洋上を航海しながらデータセンターとして運用することも可能です。

【中古船を改造し洋上データセンターを建設するメリット】

  • 既存船体を活用することによって原材料の採掘・加工から生じる環境負荷を低減
  • 初期投資および運用コストの削減
    建設にかかるコストを削減できるほか、既存の船内システム(空調、取水、発電機など)を活用することで、初期投資のコスト削減が見込まれます。また、海水を活用した水冷システムはエネルギー効率がよく、サーバの冷却にかかる電力消費を抑制し、運用コストを削減します。
  • 広範なスペース
    (例:約54,000m2の床面積を有する自動車運搬船は延べ床面積ベースで日本最大級の陸上データセンターに匹敵)

本事業は、当社グループのアセットと船まわりのノウハウを活かしつつ、環境負荷をおさえながら迅速にデジタルインフラを構築できるプロジェクトです。当社グループは、今後も海運業を中心に様々な社会インフラ事業を展開し、環境保全を始めとした変化する社会のニーズに技術とサービスの進化で挑みます。

(註1) Kinetics technologies holdings limited
Kineticsは、トルコを拠点とする多角的エネルギー企業であるKaradeniz Holdingによって設立された会社です。Karadeniz Holdingは、世界最大の浮体式発電船(パワーシップ)の所有・運営会社であるKarpowershipの親会社です。Karpowershipが浮体式発電資産に特化しているのに対し、Kineticsは、浮体式LNG資産、蓄電池システム、データセンターのような新セクター向けのモジュール型エネルギーソリューションといった補完的なエネルギーインフラ分野へのグループ展開を目的として設立されました。両社は、浮体式発電と浮体式LNGインフラの組み合わせや、ハイブリッドエネルギープラットフォームの開発といった統合ソリューションの提供において、密接に連携しています。
Karadeniz Holding HP:Karadeniz Holding | Home

(註2) グローバルのデータセンターの市場規模は2021年時点で552億米ドルと推定されており、2030年には1,241億米ドルまで拡大する見込みです。

【パイロットプロジェクト概要】

項目 詳細
データセンター容量 20~73MW(モジュール構成により拡張可能)
冷却システム 海水または河川水を利用した直接水冷
データセンターの船舶仕様 総トン数:9,731トン
全長:120.00m
幅(ビーム):21.20m
ドラフト:8.98m
電源
  • Karadenizが提供する発電船(LNGなど複数の燃料を使用可能)
  • 電力系統接続も併せて検討
ネットワーク
  • 陸上のIX(インターネット・エクスチェンジ)や海底ケーブルとの接続を予定

【プロジェクトタイムライン】

主なマイルストーン
2025年 洋上データセンターの改造設計完了、データセンター事業者および港湾当局とのMOU締結
2026年 中古船から洋上データセンターへの改造工事開始、許認可取得、商業契約締結
2027年 洋上データセンターの稼働開始

※現時点での想定


商船三井グループが設定した5つのサステナビリティ課題
商船三井グループでは、グループビジョンの実現を通じて社会と共に持続的な発展を目指すための重要課題として「サステナビリティ課題 (マテリアリティ)」を特定しています。本件は、5つのサステナビリティ課題の中でも特に「Environment -海洋・地球環境の保全-」、「Innovation -海の技術を進化させるイノベーション-」にあたる取り組みです。船舶という既存資産を再生・高度化しデータセンターへ転用する本手法は、インフラ分野における資源循環の新たなモデルケースとなり、脱炭素とデジタル化を同時に推進する当社独自のイノベーションです。