海運は他の輸送手段に比べ、一度に大量の物資を運ぶことができ、単位輸送当たりのCO2や大気汚染物質の排出量が少ない、環境にやさしいエコな輸送モードです。
しかし、その一方で新興国の発展による世界経済の成長に伴い、全世界の海上貨物量は増加を続けています。海上荷動きは年間100億トンを越え、今後さらに増加することが見込まれます。海上荷動きが増加することで、エネルギー消費の増大によるCO2排出量増が地球温暖化など、様々な環境問題を深刻化させています。また、気候変動が引き起こす大型台風の発生増加などは、港湾における荷役の遅延や、フェリーの運休などの要因ともなります。外航船舶から排出されるCO2は、全世界の約2%となっており、環境問題への対策が必要となってきています。当社は環境負荷低減技術の採用や減速航海によりCO2排出量削減を図っています。
2022年に策定した技術開発スローガン「One mile ahead」により、環境負荷軽減を含め、船舶だけに限らず広く「海」の技術を進化させるイノベーションを更に促進します。当社の技術革新推進体制はこちらをご覧ください。
また、2022年に専任チームに加え、フィリピンに新会社EcoMOL社(現MOL Enterprise (Philippines) Inc.)を設立し、効率オペレーション(DarWINプロジェクト)を推進しています。システム・体制・プロセスを3本柱とした最適運航の追求、また、(株)三井造船昭島研究所・商船三井テクノトレード(株)と提携した省エネ設備の積極導入を行うことで、燃費効率の向上・GHG削減に取り組んでいます。
船舶は世界中の海上を移動するため、一国だけで対処することができない問題が多く、国際的な取り組みが不可欠です。国連気候変動枠組条約では、国際海運における温室効果ガス(GHG)排出抑制策は国際海事機関(IMO)において検討することとされています。現在IMOでは、各種国際条約や規則の採択、発効および検討がなされています。当社グループは、これらの環境規制を遵守するとともに、事業を通じて与える海洋および地球環境への負のインパクトを最小化し、海洋・地球環境の保全に努めています。
~2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | 2027 | 2028 | 2029 | 2030 | |||
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気候変動対策 | 新造船燃費規制(EEDI) <MARPOL条約付属書Ⅵ> |
Phase 2 | Phase 3 | |||||||||
現存船燃費規制(EEXI) <MARPOL条約付属書Ⅵ> |
適用 | |||||||||||
燃費実績格付け制度(CII) <MARPOL条約付属書Ⅵ> |
適用 | |||||||||||
SEEMP(船舶エネルギー効率管理計画書)<MARPOL条約付属書Ⅵ> | 義務化 | |||||||||||
燃料消費実績報告制度(DCS) <MARPOL条約付属書Ⅵ> |
義務化 | |||||||||||
欧州燃費報告制度(EU-MRV) <Regulation (EU) 2015/757> |
義務化 | |||||||||||
欧州域内排出権取引制度(EU-ETS) <Directive (EU) 2023/959> |
適用 | |||||||||||
船舶で使用する燃料のライフサイクルGHG強度等規制(FuelEU Maritime) <Regulation (EU) 2023/1805> |
適用 | |||||||||||
大気汚染の防止 | SOx(硫黄酸化物) PM(粒子状物質) <MARPOL条約付属書Ⅵ> |
一般海域 | 硫黄分0.5% | |||||||||
ECA | 硫黄分0.1% | |||||||||||
NOx(窒素酸化物) <MARPOL条約付属書Ⅵ> |
一般海域 | 2次規制 | ||||||||||
ECA | 3次規制 | |||||||||||
海洋環境保全 生物多様性保護 |
船からの油・有害液体物質・有害物質 <MARPOL条約附属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ> |
義務化 | ||||||||||
船からの汚水 <MARPOL条約附属書Ⅳ> |
義務化 | |||||||||||
船からの廃棄物 <MARPOL条約附属書Ⅴ> |
義務化 | |||||||||||
バラスト水 <バラスト水管理条約> |
義務化 | |||||||||||
船体付着生物 <船体付着生物管理ガイドライン> |
2011年ガイドライン採択 | |||||||||||
船底塗料への指定有害物質使用禁止 <AFS条約> |
義務化 | |||||||||||
水中騒音 | 船舶による影響等を議論中 | |||||||||||
シップリサイクル <シップリサイクル条約> |
2009年採択 | 義務化 |
(*) ECA:Emission Control Area(排出規制海域)。現在ECAに指定されているのは次の3海域。(1)米・加沿岸200海里海域(NOx及びSOx)(2)米国カリブ海海域(NOx及びSOx)(3)バルト海および北海海域(現在SOxのみ。2021年以降の起工船舶はNOx3次規制も対象となる)