環境規制


海運が環境に与えている影響

飛行機/トラック/船舶
CO2排出量対比表

海運は他の輸送手段に比べ、一度に大量の物資を運ぶことができ、単位輸送当たりのCO2や大気汚染物質の排出量が少ない、環境にやさしいエコな輸送モードです。

しかし、その一方で新興国の発展による世界経済の成長に伴い、全世界の海上貨物量は増加を続けています。海上荷動きは年間100億トンを越え、今後さらに増加することが見込まれます。海上荷動きが増加することで、エネルギー消費の増大によるCO2排出量増が地球温暖化など、様々な環境問題を深刻化させています。また、気候変動が引き起こす大型台風の発生増加などは、港湾における荷役の遅延や、フェリーの運休などの要因ともなります。外航船舶から排出されるCO2は、全世界の約2%となっており、環境問題への対策が必要となってきています。当社は環境負荷低減技術の採用や減速航海によりCO2排出量削減を図っています。

2016年度に開始した「船舶維新Next~MOL SMART SHIP PROJECT~」により、今後はさらに積極的に環境負荷低減技術の採用を推進します。また、再生可能エネルギー事業などの環境事業分野に新たに参入し、将来的に中核事業に育てることを目標としています。


大気への負荷

CO2の排出(地球温暖化)

  • 燃料消費削減(ECO SAILING)※1
  • 技術開発(船舶維新、新型帆装装置)※1

参照:CO2排出対策

NOxの排出・SOxの排出(大気汚染)

  • 燃料消費削減※2
  • 技術開発(NOx除去装置、SOxスクラバー、DPF*など)※2
    * PM(煤塵)除去装置

参照:NOx排出対策、SOx排出対策、煤煙・煤塵対策

海洋への負荷

油による汚染・船内廃棄物(海洋汚染)

適正な処理※3

参照:海洋環境保全への取り組み

バラスト水・船体付着物(生物多様性)

技術開発(バラスト水処理装置※4・ペイント※5など)

参照:生物多様性保全への取り組み

当社グループの環境負荷に関する詳細は、サステナビリティデータ集をご参照ください。


様々な環境規制

船舶は世界中の海上を移動するため、一国だけで対処することができない問題が多く、国際的な取り組みが不可欠です。国連気候変動枠組条約では、国際海運における温室効果ガス(GHG)排出抑制策は国際海事機関(IMO)において検討することとされています。現在IMOでは、各種国際条約や規則の採択、発効および検討がなされています。当社グループは、これらの環境規制を遵守するとともに、事業を通じて与える海洋および地球環境への負のインパクトを最小化し、海洋・地球環境の保全に努めています。

    ~2021 2022 2023
気候変動対策 新造船燃費規制(EEDI)
<MARPOL条約付属書Ⅵ>
Phase 2 Phase 3
現存船燃費規制(EEXI)
<MARPOL条約付属書Ⅵ>
  適用
燃費実績格付け制度(CII)
<MARPOL条約付属書Ⅵ>
  適用
SEEMP(船舶エネルギー効率管理計画書)
<MARPOL条約付属書Ⅵ>
義務化
燃料消費実績報告制度(DCS)
<MARPOL条約付属書Ⅵ>
義務化
欧州燃費報告制度(EU-MRV)
<Regulation (EU) 2015/757>
義務化
大気汚染の防止 SOx(硫黄酸化物)
PM(粒子状物質)
<MARPOL条約付属書Ⅵ>
一般海域 硫黄分0.5%
ECA 硫黄分0.1%
NOx(窒素酸化物)
<MARPOL条約付属書Ⅵ>
一般海域 2次規制
ECA 3次規制
海洋環境保全
生物多様性保護
船からの油・有害液体物質・有害物質
<MARPOL条約附属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ>
義務化
船からの汚水
<MARPOL条約附属書Ⅳ>
義務化
船からの廃棄物
<MARPOL条約附属書Ⅴ>
義務化
バラスト水
<バラスト水管理条約>
義務化
船体付着生物
<船体付着生物管理ガイドライン>
2011年ガイドライン採択
船底塗料への指定有害物質使用禁止
<AFS条約>
義務化
水中騒音 船舶による影響等を議論中
シップリサイクル
<シップリサイクル条約>
2009年採択、未発効、発行時期未定
MARPOL条約
船舶による汚染の防止と最小化を目的とした国際条約で、現在6つの附属書が含まれる。

気候変動対策

EEDI
Energy Efficiency Design Index(エネルギー効率設計指標)。
2011年にIMOにて採択、2015年7月以降に引き渡しが行われた船舶について(*)、基準となるエネルギー率値(1トンの貨物を1海里運ぶ航海において各船舶から排出されるCO2量)が船舶毎に設定され、基準を満たすことが要求される。2013年開始でPhaseが設定され、Phaseを追うごとに基準値が厳しくなる。各Phaseの削減率目標は、Phase 0=0%、Phase 1=10%、Phase 2=20%、Phase 3=30~50%。
(*)
-2013年1月1日以降に建造契約が結ばれる船舶
-建造契約がない場合、2013年7月1日以降に起工される船舶
-2015年7月1日以降に引き渡しされる船舶
EEXI
Energy Efficiency Existing Ship Index(就航船のエネルギー効率指標)。
新造船に対するEEDI規制と同様、就航船に対しても同様のエネルギー効率を求めるもの。2021年にIMOにて採択され、2023年から適用開始。基準となるエネルギー率値が船舶毎に設定され、基準値を満足できない船舶については、エンジンの出力制限や省エネ装置の追設等の燃費性能の改善措置が求められる。
CII
Carbon Intensity Indicator (燃費実績格付け制度)。
EEXI規制と同じく、2021年にIMOにて採択、2023年から適用開始。各船舶の性能面での規制であるEEXIに対し、個船の運航実績から年間エネルギー効率値を毎年算出、A-Eの5段階で各船の格付け評価行う制度。
SEEMP
Ship Energy Efficiency Management Plan(船舶エネルギー効率管理計画書)。
2012年にIMOにて採択、2013年から個船ごとにエネルギー効率を改善する運航手法を選択し、その実施計画について文書化して船上に備えることを義務化したもの。対象は新造船と既存船。
DCS
Data Collection System(燃料消費実績報告義務制度)。
2016年IMOにて採択され、2019年から導入された各船舶のCO2排出量実績、航行距離実績をIMOに報告する制度。本制度により収集されたデータを元に各船のCII評価が行われたり、Market Based Measures(経済的手法)の導入検討等、IMOのGHG排出削減に向けた戦略のデータ元として使用されている。今後、報告義務内容・項目について拡大が検討されている。
EU-MRV
EU-Monitoring, Reporting, and Verification of carbon dioxide emissions(欧州燃費報告制度)。
欧州議会において2015年に採択、2018年より導入された欧州独自の燃費報告制度。EU加盟国管轄内の港に寄港する総トン数5,000トンを超える船舶について、燃料消費量、航行距離、積載貨物量等のデータ収集・報告を実施するための監視計画書及び排出報告書の作成、認証機関への提出が義務付けられるもの。今後、報告義務内容・項目について拡大が検討されている。

大気汚染の防止

SOx・PM排出規制
排ガス中のSOx量、PM量を抑制するため、燃料油に含まれる硫黄分含有率を規制するもの。規制値は段階的に強化されてきており、2015年には排出規制海域(ECA:Emission Control Area(*))でにおける硫黄分含有率が0.1%まで、2020年には一般海域における硫黄分含有率の規制値が0.5%へ引き下げられた。これにより、規制に適合した燃料油(規制適合油)の使用、SOxスクラバーの導入、代替燃料への転換などの対応が求められる。
NOx排出規制
エンジン排ガス中のNOx量を段階的に規制するもの。1次規制では2000~2010年起工船に対し、エンジン定格回転数に応じた排出量の規制値を規定。2次規制では2011年以降起工船に対し、1次規制から15.5~21.8%削減することが求められる。排出規制海域(ECA(*))では2016年以降起工船が対象となる3次規制があり、1次規制から80%削減することが求められる。

(*) ECA:Emission Control Area(排出規制海域)。現在ECAに指定されているのは次の3海域。(1)米・加沿岸200海里海域(NOx及びSOx) (2)米国カリブ海海域(NOx及びSOx)(3)バルト海および北海海域(現在SOxのみ。2021年以降の起工船舶はNOx3次規制も対象となる)

海洋環境保全、生物多様性保護

バラスト水管理条約
船舶のバラスト水を介して生物や一部病原菌が越境移動することを防止する条約。2004年にIMOにて採択され、2017年9月の条約発効後、定められた期限(最長7年以内)までにバラスト水処理装置の搭載が義務付けられる。
船体付着生物管理ガイドライン
船体に付着した海洋生物のの越境移動による生態系への悪影響を防止するため、2011年にIMOにて が採択された(非強制・推奨)。本ガイドラインはIMOにて2023年を目標に改定が行われている。
AFS条約
海洋環境及び人の健康を保護するため、船体への海洋生物等の付着を防止するために用いられる船底防汚塗料に関して、有機スズ化合物を含む製品の使用を禁じるもの。2001年にIMOにて採択。
シップリサイクル条約
船舶のリサイクルにおける労働災害や、環境汚染を最小限にするための条約。2009年に採択済みで、発効要件を満たした24ヵ月後に発効する。船舶リサイクル施設、リサイクル時の手続きなどについて規定したもので、船舶に存在する有害物質等のインベントリリスト(一覧表)の作成・備置・更新が義務付けられる。