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創立記念日 社長挨拶文

2006年04月03日

当社は、本日創業122周年の記念日を迎えました。創立記念日に際する社長 芦田昭充の挨拶をお知らせします。


一昨年度に続き好決算を達成
商船三井グループの皆さん、当社は本日創業122年の記念日を迎えました。
昨年度(2005年度)の当社グループの業績は、MOL STEP Reviewの計画値には残念ながら届かないものの、一昨年度(2004年度)とほぼ同じレベルの好決算を維持する見通しです。業績に陰りが見え始めた部門もありますが、変化の大きかった市場環境下での業績としては十分に胸を張ることができる結果だと思います。この好業績達成の原動力となったグループ役職員の皆さんの努力に改めて敬意を表します。

財務体質の強化と安定利益が成長の基盤
一昨年、昨年と世界的な経済規模の拡大に伴う荷動きの増加を追い風に、当社グループは海運市況の流れを的確に捉え順調に業績を伸ばしてきました。しかしながら、定航部門では昨年末頃からコンテナ運賃マーケットが一部の航路で軟化する兆候が見えてきました。これについては大手企業の再編及び30隻近い大型コンテナ船の稼動開始に伴う過剰反応的な現象であると分析しています。コンテナ貨物の荷動きはほぼ予測通りの伸びを示していますので、全体の船腹需給が大きく緩むことはないのですが、大型船が続々と竣工してくる、ここ1、2年は厳しい環境が続くことも覚悟しなければなりません。一方、不定期専用船部門については、ドライ、タンカーともに海上荷動きの規模拡大とトン・マイルの伸びを背景に、強含みの市況が継続すると予想されます。

このような環境の中で、当社グループとしては今後も一定の利益を確保しつつ、長期的な成長を続けていくことができるものと考えます。
その根拠は当社グループの財務体質の強化と、バランスの取れた事業ポートフォリオの構築にあります。確固たる財務体質の構築の中心となるのが株主資本の増強と負債の削減です。MOL STEPスタート時の2004年3月末に2,215億円であった株主資本は、その後2年間で約4,000億円となり、MOL STEP Reviewの仕上げとして、2007年3月には約5,000億円まで積み上がる見込みです。一方、有利子負債は2004年3月末に4,917億円であったものが、その後の大規模な設備投資及びダイビルの子会社化にもかかわらず、2006年3月末で5,700億円、2007年3月末にはそれが削減されて約5,400億円に留まる見通しです。結果としてギアリングレシオ(注1)は2004年3月末に2.2倍であったものが、2006年3月末には1.4倍となり、2007年3月末にはほぼ1倍強まで改善されることとなります。これにより当社グループは、更なる投資余力や不測の事態に備えた十分な体力を持った国際的な優良企業としての評価を得るものと考えます。また、企業体力の強化による格付けの上昇は、今後予想される金利上昇局面にあって資金調達コストの低減により、更に当社の競争力を高めるものになるでしょう。

一方、収益構造面では、市況の影響を受ける事業と、中・長期契約により安定した利益をあげる事業を組み合わせることで、バランスのとれた船隊と事業ポートフォリオを作り上げてきました。昨今の海運各分野における旺盛な需要と運賃マーケットの上昇の好機を捉えたことが、当社グループの業績を押し上げたことは事実ですが、これは、不定期専用船部門での中・長期契約による確定収入と、ダイビルに代表される不動産事業などの市況変動を受けにくい事業から生み出される「安定利益」を基盤に、マーケット変動のリスクを取ったビジネスに果敢に挑戦してきた成果でもあります。年間900億円に達するこの安定利益の厚みこそが、マーケット変動が大きい環境下でも、当社グループが成長を続けるための支えとなっているのです。
(注1:ギアリングレシオ=有利子負債÷株主資本)


船隊規模は計画通り2009年には900隻体制に
海運業においては各企業の競争力の源泉はその船隊規模にあると考えます。大規模な船隊を持つことで幅広い顧客のニーズに応えることができ、更に、中・長期契約で安定的な利益を確保しつつ、それを基盤に短期のマーケットでのビジネスチャンスを追うことができます。当社グループは輸送キャパシティにおいて現在でも世界最大の船隊を有しています。MOL STEP Reviewでは、2004年3月から2007年3月までの3年間に運航規模を645隻から750隻まで、更に続く2010年3月までの3年間で900隻まで拡大させる計画です。2006年3月には700隻を超え、本年度も49隻の新造船竣工を予定するなど、900隻の船隊に向けて着々と計画が進んでいます。

大規模船隊を支える安全運航体制
しかしながら、大規模な船隊整備を進めるだけでは目指す成長を達成することはできません。その基盤となる最も大切な要素のひとつは安全運航の実践です。昨年度はタンカーとドライバルク船の船舶管理体制の再構築に関する方針を決定しました。いずれも、運航規模が拡大する中、本社とインハウス船舶管理会社及び本船の間の意思疎通を太いクリアーな一本の線で繋ぐことを目指したものです。より安全な運航体制構築のために、中核となる本社機能を持った統括船舶管理会社を設立し、その下に海外船舶管理会社を複数の拠点に配置することで、本社の安全運航に関する統一した方針をグループの全船隊へ徹底することができる組織となります。本年度はこのネットワークをスムーズに立ち上げ、有効に機能させることで安全最優先のよりきめ細かい船舶管理を行っていきます。

海外営業力の強化
現在、BRICsなどの新興経済諸国が新たに生み出す需要に加え、市場のグローバル化による世界経済のパラダイムシフトが起きており、これにより海上輸送の需要も大幅に増加しています。一方、日本においては経済が成熟化しており、日本発着の荷動きが今後大きく伸びることは予想しがたいと考えます。当社グループにとって大宗を占める日本のお客様へのサービスを低下させることは決してあってはなりませんが、更に業容の拡大を図り、成長を続けるためには、従来の日本国内の商権の維持・拡大に加えて、海外での商権拡大に積極的に取り組んでいく必要があります。そのためには一層の海外営業力の強化が必要です。役職員一人ひとりの能力向上とともに、組織として海外営業力の強化にむけて具体的なアクションを起こしてください。

全ての成長を支えるのは人
当社グループにおける最も重要な経営資源の一つは、言うまでもなく人材です。私は更に「全ての成長を支えるのは人である」と考えます。先に述べた海外拠点を含む船舶管理ネットワークでは、それを可能にする海技力がその成否の鍵であり、日本人海技者の育成とともに外国人海技者・乗組員の確保、育成が伴わなければ実効を上げることができません。当社グループ船隊の外国人乗組員の国籍は28カ国にのぼります。それぞれの育ってきた文化の違いもあるでしょうが、新体制の下で商船三井グループの一員として一体感を持って働いていただきたいと思います。そして、当社グループの安全運航の技術とノウハウをしっかりと身に付け、それを後輩たちに伝承していって欲しいと思います。

また、営業、管理部門の「Can Doの会」の席上で、「以前よりも業務量が増えており、要員が足りない」という声を聞きます。人材の確保、育成への対策は一朝一夕に成果が上がるものではないかもしれませんが、今後の更なる成長に向けて、グループ全体として新卒・キャリア採用者の人数を増やすことをはじめ、有期雇用社員の採用、及び個々の社員の役割に応じた研修の実施により、人材の育成、活性化を図るなどの対策も実施していきます。

創造的コスト削減
拡大するマーケットにおいて業績が伸張し、業務量が増え、忙しい日々が続くと「コストが増えてもしかたがない」というあきらめや言い訳が頭をよぎるかもしれませんが、「百尺竿頭一歩を進む(ひゃくせきかんとういっぽをすすむ)」(注2)、決して挑戦する心を忘れず、必ず何かアイディアを見つけ出すぞという気概を持って臨んでください。コスト削減というと現状のコストを下げることだけと思いがちですが、上昇し易いコストを上がらないようにすることもコスト削減です。本年度は業務効率の改善を含めた「創造的コスト削減運動」をグループ全体で展開する予定です。役職員全員が自分の業務を見直し、コスト削減に向けた知恵を出し合っていただきたいと思います。

最後に、当社グループ各船の安全運航と全世界の商船三井グループ従業員とそのご家族のご健康とご多幸をお祈りして、私の創立記念の挨拶とさせていただきます。

(注2:禅語。百尺もある長い竿の先に到達しても、そこに安住することなく更に一歩を踏み出すことで悟り続けることができる。転じて努力の上に努力を重ねることで更に進歩向上することができるという意味) 

以上