2023年01月05日
株式会社商船三井社長 橋本剛は1月4日に商船三井グループの全役職員に向けての年頭挨拶を行いました。
商船三井グループの皆さん、明けましておめでとうございます。年頭にあたり私の所感を皆さんにお伝えします。
昨年は、世界的に「withコロナ」時代への転換が進み、経済活動や社会生活の正常化が徐々に感じられる1年でした。渡航制限の緩和が進み、足元では海外出張も自由にできるようになりました。私自身も、昨年後半から世界の様々な機会に参加し、各国の政府関係者や企業関係者との意見交換を通じ、世の中の変化に直に触れる機会を積極的に持つようにしています。皆さんも是非、事業の現場や取引先と直接コミュニケーションする機会を生かし、当社グループの将来に関し建設的な意見発信をして欲しいと思います。
また、昨年は2月にロシアによるウクライナ侵攻が発生し、世界の経済・社会が広く深刻な影響を受けた1年となりました。サプライチェーンの寸断、エネルギー・穀物価格の高騰、世界的なインフレの進行等、依然として様々な分野で混乱が続いています。ロシア関連事業から撤退を決めた企業も有りましたが、当社グループは、人々の暮らしに不可欠な物資を輸送する海運業を中心とした社会インフラ事業を展開する企業として、乗組員や貨物及び本船の安全確保を最優先に、今後も安定した輸送サービスの提供を続けていきます。LNGを中心としたロシアからのエネルギー輸送事業は今後も出来る限り続けていく所存であり、これは日本政府の方針とも方向性を合わせたものです。一日でも早く事態が終息し、ウクライナの方々に安全で平穏な日々が戻ることを祈念します。
今期の業績は、昨年度に続き旺盛な海運需要とそれに伴う市況高騰の恩恵を受け、過去最高益を更新する見込みです。一方、社会の正常化に伴い物流混乱が収束に向かう中、コンテナを中心とする一部のセグメントでは、既に運賃市況が下落に転じています。海運市況は常に変動が激しく市況の反転は想定していたことですが、世界経済は全体的に低下傾向にあり、今後の市況悪化に備える必要も生じてきました。今期の業績に関しては、コロナ禍以降各部門が業務改革と事業構造の変革に取り組み、競争力を磨いてきたことが好業績に繋がったと思います。皆さんの努力に、改めて感謝の意を伝えたいと思います。
2023年の事業環境ですが、昨年末に中国がゼロコロナ政策の見直しを表明しましたので、約3年におよぶ新型コロナウィルスによる混乱は収束し、世界の経済・社会は徐々に正常化に向かうと思います。直近の2年間は、海運市況の高騰を背景に好業績となりましたが、昨年からの世界的なインフレの進行、高金利とそれに伴う景気悪化の影響により、来期の業績は、2021年・2022年度に比べ減益となるだろうと予想しています。今年は、欧米各国のインフレ対策の効果が現れ、一時的に大きな景気の落ち込みがあるかも知れませんが、中国経済の正常化や米国の金利上昇ペースの鈍化等、そう遠くないタイミングで緩やかな景気拡大基調に復帰することを期待しています。私たちは、この2年間で蓄えた資本を、損益悪化に対する備えと将来の成長のための投資に、有効に活用していく1年にしたいと思います。
次に、昨年12月に発表した新しい組織・体制についてお話しします。今年の組織改編は大規模なものとなります。ポイントを2つお伝えします。
一つめは、グループの主要戦略の一つである地域戦略を強力に推進するための体制にすることです。まず、海外事業を拡大するために、グループの組織を大きく「コーポレート組織」「営業組織」「地域組織」の三つに分割し、それぞれが連携・協力し、また適切な牽制を行う体制に変更します。それを支える執行体制として、「コーポレート組織」が、グループガバナンス強化を含むコーポレート機能に関するグループ全体の経営課題に対応するチーフ・オフィサー制を導入します。
また、「地域組織」での事業開発・運営を促進するための「地域組織」専任の地域担当役員を各地域に設置します。地域戦略の推進には、各事業案件に対する意思決定の迅速化も重要な課題です。そのためには「地域組織」への権限委譲が不可欠であり、現在具体的な検討を進めています。
「営業組織」についても同様に、本部長への権限委譲を進め、意思決定のスピードを高めていきます。当初は、「地域組織」の強化に伴い、「営業組織」との連携や調整が複雑になる場面が出てくると思います。「地域組織」と「営業組織」の方針が異なる場合には、今回新設するCOOがグループの全体最適に基づき経営判断を行う仕組みを導入します。
新組織・体制において実際の運用は簡単ではないと思いますが、グループの成長に向け事業規模・領域を拡大するためには、踏み込んだ対応が必要との覚悟を持って決断しました。
二つめは、ポートフォリオ戦略の一環として、非海運業への事業領域拡大を支える体制にすることです。昨年11月に投資方針を発表したクルーズ事業をはじめ、B to C事業としての性格が強い事業・グループ会社をまとめ、「ウェルビーイングライフ営業本部」を新設します。市況性の高い海運業を今後もコア事業として続けていくためにも、海運市況と異なる市況サイクルにある非海運業を事業ポートフォリオに組み込むことで、グループ収益構造の安定化を図ることが狙いです。
本日より、グループ全体の人的資本の育成、充実のための政策を立案・推進するHuman Capital Strategy Divisionが活動を開始します。今回の組織改編は、組織・体制の設計変更だけではなく、安全、DX、人財、ガバナンスの強化に資する体制にすることも同じく重要なものです。それぞれの重要なテーマについて、現在ビジョンとアクションプランの策定に取り組んでいます。それらは次期経営計画の一部として発表し、来期より重点的に取り組んでいきます。
私は社長就任以来、「商船三井グループをあらゆる面で優良企業とイメージされる存在にしたい」と述べてきました。具体的にはサステナビリティ経営、提供するサービスの質、収益力、人財の質の高さ、高度な技術力等あらゆる面において、全てのステークホルダーから信頼され、高い評価を頂ける企業グループになるということです。これは、当社グループの全役職員が、誇りと責任感をもって働くことができることを意味します。
当社グループは、地域戦略に沿って海外での事業開発を積極的に進める方針であり、また従来の海運業にとどまらず、海洋事業、物流事業、不動産事業、クルーズ事業等、非海運業の強化を進めています。Rolling Plan 2022及び来期からの新経営計画にしっかりと取り組み、グループの成長と企業価値向上を通じて、優良企業を目指していきましょう。優良企業であるためには、コンプライアンスの遵守は当然の事ですが、事業の根幹である安全の確保、当社グループで働く全役職員の健康が最も重要です。この点は、改めて皆さんに強調したいと思います。
最後になりますが、商船三井グループの全運航船および全ての現場の無事故を願い、全世界の商船三井グループの皆さんとご家族のご健康とご多幸を祈念して、私の新年の挨拶と致します。