健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、企業の生産性・業績・企業価値の向上を目指し戦略的に実践することです。
商船三井グループは、「世界最高水準の安全品質」を実現し、健全で活力あるイノベーティブな組織をつくり、「強くしなやかな企業グループ」を目指します。この実現のためには、全役職員と会社が共に心身の健康の維持・増進に努め、安心して働ける職場環境を創り上げていくことが必要不可欠であると考えます。事業活動を行っている各国・地域の法令や船員を対象とした国際条約に基づく施策はもとより、事故・災害等の緊急事態に対応できる体制を構築し、グループ一体となってさまざまな健康維持・増進に向けた取り組みを進めます。
2021年度には、当社グループの健康経営推進の指針として「健康経営宣言」を策定し、社員の健康増進を重要な経営課題と位置づけ、グループ内にその浸透及び推進を図ると共に、社員一人ひとりの健康管理への意識をより高め、健康経営推進の取り組みを深めて行く契機とします。
商船三井グループは、企業理念の下で目指すグループビジョンの実現に向けて、社員の健康増進を重要な経営課題と位置づけ、次の取り組みを行います。
人事部キャリア・ウェルネス推進チームが中核的役割を担い、産業医・内科医、保健師・精神科医・公認心理師・鍼灸マッサージ師からなる産業保健スタッフと、健康保険組合をはじめとする様々な関係者と連携を図りながら、商船三井グループの健康経営を推進しています。また、洋上に勤務する船員の心身の健康については、安全衛生委員会等とも連携をしながら、効果的な取り組みを企画・実行しています。健康経営推進に関する情報は健康経営推進人事協議会にて海陸一体で共有され、四半期ごとに経営・取締役会にも報告しており、取締役会は健康経営に関する取組への監督責任を負っています。
グループ経営を推進している状況下、社員の労働安全衛生・健康管理に関しては、商船三井単体の社員のみならずグループ会社も含めて対応しています。商船三井グループ間で共有できる健康増進基盤の整備や、グループ各社の実情に応じて 実効性ある施策の検討・実施・効果検証・改善を行っていきます。具体的には、ストレスチェック、医療サービス会社との提携、人事労務知識・ノウハウを学ぶワークショップや人事労務アセスメントを定期的に実施しグループ全体の労務管理強化を図っています。
また、当社運航船に乗船する外国籍船員についても、世界各国のマンニング会社への情報提供や啓蒙活動を通して、健康維持・増進を推進するとともに、安全意識・安全文化の醸成に繋げ、当社の安全運航体制を強化しています。
当社は、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営優良法人 (大規模法人部門)」に6年連続で認定され、そのうち上位500社の「ホワイト500」に2年連続で選定されました。
健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康経営課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業などの法人を顕彰する制度です。2023年度の健康経営度調査(大規模法人部門)において、当社は総合評価で、応募総数3,523社の内、上位500位以内にランクインしました。
当社がこれまで継続的に実施してきた積極的な情報開示や、健康経営の取り組みに関する各種指標が向上したことに加え、働き方の多様化に合わせた社員の健康維持・増進やコミュニケーション促進に関するさまざまな施策を実施したこと、人事部・産業保健スタッフ・商船三井健康保険組合が連携し、海上・海外勤務を含めた全社員のフィジカル・メンタル両面での健康のサポートを行っていることが評価されました。
2035年をゴールとするグループ経営計画BLUE ACTION2035におけるサステナビリティ課題である「安全(Safety &Value)」・「人財(Human &Community)」を支える基盤として健康経営に戦略的に取り組むことで企業価値の向上、グループビジョンの実現を目指します。
生活習慣病のリスク管理やメンタルヘルスの維持・改善を健康課題として取り組んでいます。海上・陸上での「働く環境」「からだの健康」「こころの健康」の3つの取り組みが連携して有効に働くことで取りこぼしのないきめ細やかな支援の輪を広げています。
社員一人ひとりが自らの健康は自ら守る意識を持ちながら、心身の健康づくりに主体的に取り組むことを目指し、心身の健康度合いと向きあうきっかけとなる定期健康診断の受診率、ストレスチェックの受検率の上昇を目指します。
また、喫煙による様々な疾病リスクの低減、受動喫煙防止を目指し、喫煙率の低下を目指します。
労働災害ゼロ、死亡災害ゼロ
【海上】LTIF(Lost Time Injury Frequency*) 0.5以下
(*) 100万人・時間当たりの労災事故発生件数。
2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
99.4% | 99.9% | 100% |
(*) 対象者は、労働安全衛生法に基づく。
2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
81.6% | 85.8% | 85.7% |
(*) 集団健診において要精密検査と診断された従業員の精密検査受診率
2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
87.5% | 97.9% | 98.3% |
(*) 対象者は、労働安全衛生法に基づく。
2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
14.2% | 12.8% | 11.1% |
2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
2.6% | 5.2% | 5.6% |
2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
17人 | 17人 | 16人 |
2022年 | 2023年 |
---|---|
81% | 91% |
(*) 2022年は商船三井従業員と国内グループ会社勤務者が対象(回答者3,948人)
2023年は海外グループ会社勤務者まで対象を拡大(回答者6,821人)
本社ビルのリノベーションに伴い2023年12月に医務室を移転・リニューアルしました。広さを旧医務室の約1.4倍に増床、医療職・産業保健スタッフの執務室をより広く働きやすい環境に刷新し、併せて社員との面談や診察に利用する個室も増設し、利便性が向上しました。
2024年3月には健康維持管理機能の拡張と体制の強化・整備を目的に医務室を組織改編し、健康管理推進センター(Health Administration Center)を設立。
専門スタッフで構成される「健康支援部門」「産業衛生部門」「メンタルヘルス部門」の3部門で構成され、各部門の専門性をより深め同時に部門間の連携を強化することでより効果的にきめ細かく健康施策に取り組む体制を構築しています。
按摩・マッサージ、鍼・灸の資格者が常駐し、いつでも鍼、灸、指圧、マッサージ、フットマッサージやオイルマッサージを受けることができます。
長時間のデスクワークや姿勢の悪さ、運動不足によって、肩こり・腰痛・眼精疲労など不調を訴える社員にとっての症状改善はもちろん、疲労の回復・血行改善などの効果もあり、リフレッシュすることで仕事の生産性向上に繋がります。多忙な社員には15分間のショートコースもあり隙間時間に利用できます。尚、1か月1時間の利用までは勤務時間としてみなされます。
利用人数実績:
2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
240人 | 352人 | 476人 |
産業医2名と保健師(兼看護師)2名が人事部の担当者と共に社員の健康維持管理にきめ細やかに対応します。労働安全衛生法対応にとどまらず、広くゼロ次予防から始まる健康ループ施策として、産業医・保健師による社内セミナーの実施や、商船三井健康保険組合との協力、会社の健康経営施策の立案・推進においても大きな役割をはたしています。また、健康管理推進センター内の健康支援部門、メンタルヘルス部門と連携することで健康リスクの高い社員に対してもスピーディかつ効果的なケアを提供できる体制となっています。
本社社員だけでなく、国内外出向者の体調不良者に対しても保健師がメール等で食事相談等の健康サポートを実施しています。産業医、内科医、保健師と連携し、社員一人ひとりの健康意識の向上に役立っています。
集団健診後、健康管理推進センター・かかりつけ医等にて保健指導を受けた人数:
2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
184人 | 182人 | 189人 |
メンタルヘルスケア専用の受付、待合室、執務室、打合せ室、面談用の個室3部屋を有した通称「C-room」を健康管理推進センター内に開設しました。
精神科医2名、公認心理師(臨床心理士)4名がチームとなり、守秘義務を遵守しながら、職場や人事部とも適切に協働し対応にあたっています。当社のメンタルヘルスの取り組みは、個別対応・組織分析・教育研修の3つに大別できます。個別対応や組織分析から得られる情報を教育研修に活用し、教育研修の機会を通じて収集した情報を、個別対応や組織分析に活かす、こうした循環的な取り組みを心がけています。
本社近隣の歯科医院の協力により、毎年定期健康診断に合わせて「無料歯科健診」を実施しています。定期的に歯科医のチェックを受け、歯周病予防、症状のない虫歯を治療し、健康な歯を維持できる様、サポートしています。
利用人数;
2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
26人 | 34人 | 34人 |
2024年度からは更に多くの役職員が無料歯科検診を受けることができるよう商船三井健康組合の保健事業として、本社ビル内で巡回歯科検診を実施します。
本社ビル内で商船三井グループ役職員を対象としたインフルエンザ予防接種を実施しております。今後も多くの希望者に機会を設け、予防につなげていきます。
接種者数(概算):
2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
924人 | 878人 | 803人 |
健康管理推進センターで禁煙サポートプログラムを実施。定期的な医師面談とニコチンパッチの購入補助をしています。また商船三井健康保険組合の保健事業である外部の禁煙サポートサービスも受けることができます。
喫煙スペースの廃止
2021年度末より、本社事業所内の喫煙スペースを廃止し全面禁煙としました。また、毎月22日を「禁煙の日」に設定し、社員の健康増進を目的として社内で禁煙に関する掲示を行い、社員の意識向上を目指しています。
2024年4月に新しい社員食堂がオープン。
社員食堂「ライン虎ノ門」をリニューアルオープン ~朝から夜まで人が集まるコワーキングカフェテリアへ~
ランチでは社員が健康を維持しながら元気に働くために栄養士と連携し、ビタミンやタンパク質、食物繊維などがバランスよく含まれた栄養価の高い料理を提供しています。和食、洋食、麺類、多国籍メニュー等、サラダや副菜も多数ラインアップされています。栄養たっぷりの具沢山スープや、不足しがちな野菜に加えナッツや豆類、フルーツ、肉や魚のタンパク質も一皿で取れ食べ応えもある「MOLサラダ」は健康メニューとして人気です。他にもマンナンライスや五穀米などの健康米も提供、また「500キロカロリーメニュー」(主食・主菜・副菜で1食500kcal以下の組合せ)を日替りで紹介し、社員の健康増進に寄与しています。
日替り「MOLサラダ」
人気の日替りスープ
本日の500キロカロリーメニュー
毎年ヘルスケアアンケートを実施し、社員が健康でイキイキ働く職場環境づくりに向けて、社員のニーズを把握しています。
定期的に同アンケートを実施し、情報の認知、ヘルスリテラシー向上、生産性、健診データ改善等の目的に合わせて調査・検証およびPDCAサイクルを循環させ、情報提供や健康施策を講じています。
【短期評価】
(1)自覚症状 ◆健康に関して気になることTOP5
2021年 | 回答人数 | 2022年 | 回答人数 | 2023年 | 回答人数 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 新型コロナウイルス への対応 |
392人 | 運動 | 368人 | 睡眠 | 413人 |
2 | 運動 | 376人 | 睡眠 | 320人 | 運動 | 386人 |
3 | 睡眠 | 288人 | ストレス | 308人 | 食事 | 349人 |
4 | 食事 | 268人 | 食事 | 292人 | ストレス | 340人 |
5 | ストレス | 261人 | 肩こりや腰痛 | 227人 | 肩こりや腰痛 | 271人 |
(2)従業員のヘルスリテラシー(意識変容)
健康施策の一つとして、同アンケートを基に社員の健康課題を分析し、健康増進につながる講座を実施しています。
【過去の実施講座】
過去実施セミナー (2021~2023年度) |
参加人数(人) | 参加者の満足度 (事後アンケート回答者のうち、 満足と回答した人の割合) |
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2021年度 | ||
一生使える!ハイパフォーマーの睡眠技術 | 214 | 94.5% |
2022年度 | ||
男性にも知ってほしい!働く女性の健康セミナー | 106 | 87.5% |
2023年度 | ||
食生活改善セミナー | 76 | 85.2% |
健康経営がわかる会 | 87 | 84.0% |
階層別に、健康とメンタルヘルスに関するセルフケア、部下のラインケアなどの研修を実施しています。また、年代・役職に合わせ、生活習慣病や女性特有の病気に関する知識の提供や予防に向けた対策などを盛り込んだ研修を産業医、保健師、公認心理師が実施することで、より高い効果を目指しています。
残業時間の削減に向けて、以下の様な取り組みを実施しております。
社員が活き活きと安全に働ける職場を目指して、ハラスメント対応にも力を入れています。2020年11月にはハラスメント防止宣言を策定し、一切のハラスメントを根絶し、ハラスメントから解放され、人権や価値観を互いに尊重し合い、受け止め合える職場づくりを今まで以上に力強く推進しています。
社員に向けては階層別にハラスメント防止研修を実施している他、商船三井グループ向けにも階層別に外部講師を招いてハラスメント防止研修を実施しています。
また、商船三井グループとしてもハラスメントに適切に対応できるよう各社担当者との連携やグループ役職員及びその家族が利用できる外部相談窓口も設置しています。
当社は、世界最高水準の安全品質を目指して、陸上と海上が「4ゼロ」(註)を始めとする目標達成に取り組んでいます。世界最高水準の安全品質の達成は、社員ひとり一人の健康があってこそ実現できるものです。以下では、主に乗組員の健康への取り組みについて紹介致します。
(註)「重大海難事故、油濁による海洋汚染、労災死亡事故、重大貨物事故のゼロ」を意味し、安全性を測るための客観的指標として、当社が設定する数値目標。
LTIF(Lost Time Injury Frequency)をはじめとしたKPIの社内認知度向上、分析深度化のため、IT部門と連携し、事故や怪我のデータの分析、活用、共有を行っております。
乗組員は、産業医による健診結果の確認と心身の健康維持に向けてのアドバイスを受けて、乗船しています。
また、乗船時は当直前にアルコールチェックを実施、定期的にドラックチェックも行い、乗組員の健康管理に努め、安全運航の基盤を揺るぎないものにしています。
また、運航船に対し、事故や怪我に関する注意喚起(Safety Alert)を配信しております。加えて、産業医や健康管理推進センターカウンセラーとも連携し、病気やメンタルヘルスに関する情報(Health care info)も不定期に配信しております。
安全運航対策の一環として、当社は安全設備への投資だけでなく、乗組員の労働災害の防止を目的として当社独自の「身体機能向上体操(“MOL Body FIT Exercise”)」を考案、2014年より日課として本船での実施を普及させる活動を行っています。
ストレッチを基本とした作業前の柔軟体操に加え、筋力強化、体幹・下肢筋力強化とバランス感覚の向上を図る体操で、転倒リスクなどを軽減する効果があります。
同Exerciseは、船員の労働災害防止に取り組む船舶所有者、船員及びその関係者を対象にした優れた取組を表彰する国土交通省の「平成28年度 船員安全取組大賞」を受賞しました。
陸上および海上で環境に応じた施策を講じて労働災害防止活動に努めています。
労働災害
労働災害発生件数はこちら
【海上】LTIF(Lost Time Injury Frequency)
(*): 0.5以下(2020年度以降)
(*) 100万人・時間当たりの労災事故発生件数(当社は乗船時間を分⺟として計算している)。従来、下船を余儀なくされる職務傷病を集計対象としていたが、2015年度よりLTIFの基準を厳格化し、下船に至らずとも、発生日に軽作業を含む労働に復帰できなかった職務傷病も集計対象に含めることとした。
また、2021年度から、安全品質に関するKPI集計対象を、従来の当社保有・管理船から傭船を含めた当社グループ全運航船に拡大するとともに、海洋事業も新たに含めている。
当社の事業の根幹である「世界最高水準の安全品質」を実現するためには、社員一人ひとりの健康が第一であり、乗組員の労働災害の防止は重要な課題と考えております。様々な乗組員の健康への取り組みを通じて、乗組員の労働災害防止に努めてまいります。
2020年度にはLTIFの目標値を改訂し、更なる高い目標に設定しました。(0.7⇒0.5に改訂)