海洋環境保全・生物多様性保護


基本的な考え方

商船三井グループは、事業による海洋環境及び生態系への影響を認識し、事業活動の場であり世界万人の共有財産である海洋環境及び生物多様性への影響を最小化するための取り組みを、積極的に推進します。安全運航の徹底による海難事故防止や、貨物の積荷役に合わせて行うバラスト水の適正管理などの環境規制遵守はもちろん、悪影響の軽減に向けた自主的な取り組みも実施しています。
当社グループが海洋環境及び生物多様性保全に努める旨は、「商船三井グループ 環境憲章」に明記しています。また、サステナビリティ計画「MOL Sustainability Plan」では、「海洋環境及び生物多様性への悪影響の軽減」という目標を掲げ、KPIとアクションプランの進捗を測りながら、取り組みの改善に努めています。詳細は、環境マネジメント及びサステナビリティ課題(マテリアリティ)のページをご覧ください。


自社における取り組み

バラスト水管理

貨物の積荷役に合わせて行うバラスト水の排出は、海洋生物を越境移動させ、海洋生態系に対して影響を与えるおそれがあります。国際海事機関(IMO)では2004年に「バラスト水管理条約」が採択され、2017年9月に条約が発効しました。

バラスト水を通した水生生物等の移動
バラスト水を通した水生生物等の移動

当社はメーカーなどと協力の上、バラスト水処理装置を開発し、2014年度に、条約発効に先行してバラスト水処理装置を搭載する全社方針を決定し、搭載を進めてきました。2021年度には新造船、既存船合計237隻に対し、装置搭載を完了しています。

バラスト水処理装置搭載 累積隻数と計画進捗率(当社グループ保有船)

船体付着生物管理

海洋生物が船体に付着し越境移動することで生物多様性へ悪影響を及ぼすことを防ぐためのガイドラインが、IMOにて採択されています。現在その改正に向けての議論が行われており、当社も業界団体を通じて実用性などの観点から意見を述べ、国際的な指針づくりに貢献しています。


海洋環境汚染の防止

  • 船舶の燃料油タンク及びタンカーの船体は、2重構造とすること(ダブルハル化)が国際条約で義務付けられており、当社グループも関係条約及び法令を遵守しています。
  • 船員の生活の場でもある船内では、荷役資材など船舶特有の廃棄物に加え、一般家庭と同様の廃棄物が発生します。当社運航船では、MARPOL条約に基づき、船内廃棄物の分別回収、貯蔵や処分を規定した「船内廃棄物管理計画」を策定。「廃棄物管理者」の指揮のもと、全乗務員に周知徹底を図っています。船内食物くずやそのほかの海洋環境に影響しない廃棄物は細かく粉砕して定められた海域で処分し、プラスチック類はそのまま陸揚げするなど、適切に処理しています。
  • 船舶の燃料油には不純物が多く含まれています。このためエンジンにおける燃料油の使用にあたっては、水分や不純物を取り除くための前処理を行っています。この前処理で発生した水分や不純物を含んだ不要な油(廃油)は、専用タンクで加熱して水分を除去した後、環境規制に適合した焼却処理を行っています。
  • 船舶のエンジンルームでは、海水系の配管や各機器からの漏洩、あるいは整備作業に伴ってビルジ(油分などを含む汚水)が発生します。このためビルジをその発生源に遡って油分の有無に応じて3つに分類し回収・処理する「ビルジ発生源分離方式」システムを導入し、適正処理を行っています。

騒音による海中生物への悪影響の低減

船舶が水中で発生させる音が、クジラやイルカ等の海中生物の生活環境に悪影響を与えている事が専門家の研究により知られるようになり、現在国際海事機関等で議論が進められています。
当社グループ会社の商船三井テクノトレード株式会社が販売する省エネ装置 PBCF (Propeller Boss Cap Fins) ※は、省エネによるGHG削減効果のみならず、水中騒音低減にも効果があることを水槽実験で確認しています。PBCFは、カナダのバンクーバー港が実施している環境保全プログラム “Eco Action Program”における水中騒音低減技術に選定されている他、カナダのプリンスルパート港でも水中騒音低減技術として認定されています。

※当社グループ会社である商船三井テクノトレード株式会社が販売するプロペラ装着型省エネ装置。


シップリサイクルの取り組み

当社グループでは、老朽化して役目を終えた船舶について、海洋環境等の環境面に配慮したシップリサイクルの取り組みを推進しています。詳細は、責任ある調達のページをご覧ください。


ラッシングベルト・オフィス用品のリサイクル

当社は自動車船で使用済みとなった車両固縛資材「ラッシングベルト」のリサイクルスキームを独自に考案し2015年より、大分県内のリサイクル業者に集約、同県内でリサイクルしています。ラッシングベルトはプラスチック部分と金具部分に分類され、プラスチック部分は二次燃料に加工、金具部分は鉄くずとして、再利用につなげています。
また、当社グループでは、「商船三井グループ 調達基本方針」を定めて環境に配慮した製品の調達を推進しており、オフィス用品においてもグリーン調達やリサイクルを徹底している他、社員の環境保全への意識を高めるため、社内コミュニケーションツールを活用した啓発活動にも取り組んでいます。


ステークホルダーと協働した取り組み

海洋マイクロプラスチック・海洋ごみの回収と調査

当社は、三浦工業株式会社とマイクロプラスチック(5mm以下の微小プラスチック粒子)回収装置を共同で開発し、2022年2月に竣工した丸住製紙株式会社向けの木材チップ船に同装置を試験搭載しました。以来順次拡大し、現在同装置を搭載した船舶は全5隻になりました。更に、航行中常時マイクロプラスチックを回収できる新型の遠心分離式回収装置を並行して開発し(第二世代)、この度同装置を当社が運航する自動車船「EMERALD ACE」に試験搭載しました。これは、新たに遠心分離装置を設けることで、配管を閉鎖することなく、海水から浮遊物濃度の高い濃縮水を分離し、効率よく浮遊物を捕捉するものです。これにより、常時取水している海水ラインの処理や、バラスト水処理装置内の逆洗機能フィルタの船外排水も全量処理することが可能となります。本船では、常時海水を取水している冷却海水ラインに接続することで、航行中常時マイクロプラスチックを回収することができ、従来機と比較して年間約70倍の海水処理が可能となります。自動車船の航路は全世界に及ぶため、航行中に同装置を稼働することであらゆる海域のマイクロプラスチックを回収し、海洋環境保全に貢献します。

マイクロプラスチック回収装置(第二世代)
自動車船「EMERALD ACE」の航路実績

他にも、当社が提案した「海洋環境保全のための海洋ごみ回収船による(海洋プラスチックごみ等の)海洋ごみ収集システムの構築に係る案件化調査」が、独立行政法人国際協力機構(JICA)の中小企業・SDGsビジネス支援事業に採択されました。現在、海洋ごみ問題が深刻化しているベトナムにおいて、現地に適合した海洋ごみ回収システムの策定に向けた調査を実施しており、2023年頃の実導入を目指しています。

※日本財団が推進する海ごみ解決を目指す”プロジェクト・イッカク”に参画する異分野融合チーム。

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「海の豊かさを守る」“Ocean180”プロジェクト

当社は、琉球大学 久保田康裕教授が中心となって進める産学官連携プロジェクト“Ocean180”に参画しています。
本プロジェクトは、海洋生物ビッグデータと統計モデルや人工知能(AI)を基に、海の生態系を見える化することで「海の豊かさを守る」ための長期プロジェクトです。“Ocean180”というプロジェクト名は、劣化する海の状況を反転し改善させるという願いをこめた名称で、生物多様性ビッグデータ分析を基にした実効性のある海の保全再生アクションを推進します。

<関連リンク>


モーリシャスにおける取り組み

2020年に発生したチャーター船「WAKASHIO」の油濁事故後、当社ではモーリシャス共和国での自然環境回復・保全や地域社会貢献活動に取り組んでいます。当社は、モーリシャスでの取り組みを推進するために現地法人MOL (Mauritius) Ltd.を設立しました。また、モーリシャスの人々に寄り添った支援を行う「MOLチャリタブルトラスト」をモーリシャスに設立し、より大規模なプロジェクトを支援するために認定特定公益信託「商船三井モーリシャス自然環境回復保全・国際協力基金」を日本に設立しました。2つの基金に総額8億円規模の拠出を順次進めています。
各基金には各分野の著名な有識者で構成される信託執行委員会と基金運営委員会を設置し、モーリシャスのマングローブ林、サンゴ礁などの豊かな自然や生態系の回復・保全、固有種を含む野鳥や渡り鳥の保護・研究活動や漁業等ブルーエコノミー振興など地域社会への貢献に関するプロジェクトを支援しています。
本取り組みは、モーリシャス政府や地域住民、現地のNGOをはじめとした多くのステークホルダーと協働しながら実施しています。

モーリシャスにおける活動については、専用サイト「MOL for Mauritius」をご覧下さい。


インドネシアにおけるマングローブ再生・保全事業

当社は、ワイエルフォレスト株式会社と共同し、インドネシアにおいて、マングローブの再生・保全を目的としたブルーカーボン・プロジェクトに参画しています。マングローブはCO2を取り込み、炭素を蓄えるだけでなく、マングローブと共に生きる生物の多様性を守る“命のゆりかご”と言われています。本事業を手掛けることで、マングローブ林や周辺の河川に棲む野生の動植物や魚介類等の生態系の回復・保全に貢献することを企図しています。また、高波から人々の暮らしを守る等、気候変動への適応策としても非常に重要な存在です。当社は本プロジェクトを通じて、マングローブの再生・保全活動を行う他、シルボフィッシャリーを導入し、持続可能な水産・森林経営を通じて地域住民の生計向上を支援し、人と自然が共生する社会づくりを目指します。詳細は、気候変動対策のページをご覧ください。


国際イニシアティブ等への参画

TNFDフォーラム

当社は、2022年11月、自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:TNFD(※))フォーラムに参画しました。

※TNFDは、自然資本及び生物多様性にかかるリスクや機会の適切な評価及び開示の枠組を構築する国際イニシアティブです。TNFDフォーラムは、TNFDにおける議論をサポートし枠組構築の支援を行うことを目的として組織された、企業、金融機関、研究機関等からなるステークホルダーの集まりです。

<関連リンク>

The TNFD Forum – TNFD


生物多様性のための30by30アライアンス

当社とグループ会社のダイビル株式会社は、環境省を含めた産民官17団体を発起人とする「生物多様性のための 30by30 アライアンス」に参加しています。
ダイビルグループは、社会の持続的発展に貢献するため、環境負荷の少ない、みどり豊かなまちづくりに取り組んでいます。自然環境との共生では「新ダイビル 堂島の杜」を始めとして、ビル敷地内での緑地整備を通じて生態系に配慮した環境保全を積極的に進めています。

<関連リンク>


国際マングローブ生態系協会(ISME)

当社は、世界各地でマングローブ林の再生・保全に取り組む「国際マングローブ生態系協会(ISME)」の機関会員として、当協会の活動の支援を行っています。


「プラスチック・スマート」フォーラム

当社では、事業活動の場である海洋の保全に対する取り組みとして環境省の主催する「プラスチック・スマート」フォーラムに参加しています。世界全体で日々発生する海洋プラスチックごみは長期にわたり海に残存し、地球規模での環境汚染が懸念されています。
「プラスチック・スマート」フォーラムは、海洋プラスチックごみ問題に関心のある企業・団体の対話・交流を促進し、海洋プラスチックの削減に向けてプラスチックとの賢い付き合い方を推進するプラットフォームです。

<関連リンク>

「プラスチック・スマート」ホームページ